73話 うさぎさん達、中大陸に降り立つ
【カップ麺の3分は実際には10分経過しているように感じる】
程なくして。
一時は巨大なイカと戦う羽目になったけど、あれから面倒ごとは起きず、船の上で進み行く海の景色を眺め続けた。
須臾の間による景色の眺めはそれはもうとても綺麗だった。海の匂う潮風からはゆらりと波が揺れ動いている。
そんな綺麗な海面をみんなで見回し時間潰ししていると大きな島が見えてきた。
目算では大きさはよくわからないけど。
私達のいる並大陸よりかは広い面積をしていた。大体並大陸を2倍にした大きさで自然豊かな大地と山々などが目に映る。
そういえば。
授業で地理よくやったけど、地名を1つ1つ覚えるのめっちゃだるかったな。
覚えづらい名前ばかり出てきたし。……別に一生そんなにたくさん色んな国に行くわけでもないのに、多くの地名や国名を覚える必要があるのかと。
当時の私は思いふけていたが。
「地名覚えるのやっぱめんどくさい。地図があれば覚える必要ねえよな」
ふと向こうに佇む大陸を眺めながら呟く。
「……あれが中大陸ですよ。並大陸より少々大きめの島です」
「えぇと。スーちゃんもしかしてその中大陸生まれなの?」
「……そうですけど、みなさん中大陸へは行かれたことないんですか?」
まさかの。
中大陸出身の方が1人いた! ……ていうかなんで今までそういうこと先に言わなかったのさ。スーちゃんアレか。意外とシャイなの?
「私は大大陸には行ったことあるけど、中大陸はなかったわね」
「……そうでしたか。よろしければなのですが、私が案内してあげますよ中大陸出身の冒険者として」
意気込んでいつになく、張り切る彼女。
まあ自分の故郷なせいかいつになく自信満々なスーちゃん。胸に拳を1つ叩きへっへんとする様子は曇り1つない顔色であった。精が出るねスーちゃん。
「でも楽しみですね愛理さん。私他の大陸には行ったことがないんでちょっとワクワクしています」
まあシホさん1人じゃ到底いけないよね。
ついて早々倒れたり。
……。
想像してみたら、着いて早々空腹で倒れそのまま海に落ちてしまう彼女の姿が目に浮かんだ。
「どうしたんですか? 私をジーと見たりして。まさか『シホさん、また倒れるんじゃないか』とか考えてません? 今は全然余裕ですよ!」
「何故分かったし。というかシホさん勝手に人の心を読むのはやめてもらおうか!
だいぶシホさんが私の考えている事が理解できているような気がした。
でもさぁ考えていることくらい自重してもらえると助かるなぁ。これは切実な気持ち。
けれどシホさんだから少しここは大目に見ようかな。これがミヤリーだったらボコっていたかもだけど。
「ほら2人共そろそろ降りる準備するわよ」
乗船からは乗員が指示を出して。
着船の準備を行う。
旗を畳み大声で乗員に声をかけて切羽詰まった勢いだった。
「帆をしまえ! 全員準備を怠るな!」
「おーーす!」
一同声を揃える。
なんか甲子園前の、試合を控えた野球部のノリみたいに感じるのは私だけ?
船が大陸の港へと着くと。
港の係員が指示を出して、船から木の橋を敷く。
柱が降ろされると、係員の指示に従い乗ってきた乗員達が降りていく。
私達はその人混みの濁流に飲まれながら。
「お、っとっとと! みんな迷子になるなよ探すのだけはすっげえ嫌だからさ!」
注意を促して無事港へと降りて。
一旦休憩。
降りた港にはカフェらしき開けたテラスがそこにあった。
数台。
パラソルの着いたテーブルと椅子4脚のワンセットがいくつも。
「ちょうど食事をとれるスペースがありますね。少し休憩していきません? お菓子や色々あるみたいですよ?」
いやあなたさっき私まだ全然大丈夫とか言わなかった!? 人は一瞬で変わる的なやつだこれ。
「……シュークリームに海の幸焼きそばというものもあるみたいですね」
「ヤキソバ? 私100年間ずっと眠っていたから知らないんだけど……愛理知ってる?」
「なぜ私に振るまあいいけど。そうだねソースが乗っかった麺だよ」
大雑把すぎだろ。この世界の文化がどうなっているか知らないけど、あるんじゃないのソース? あ、これ普通のあっちのソースだから。
「えそんな美味しい食べ物が今あるの!? なにそれ私食べたいんだけど!!」
「ミヤリーお前……これ言っている意味分からないと思うけど。昔やったソシャゲを久しぶりに復帰でやってみたら驚くほどに変わっていたみたいな反応やめろや!」
「う、うんわかんないけど、なんか私まずいこと聞いた?」
「いや大丈夫だから。毒も何も入ってないから大丈夫だって」
「な、ならいいけど」
目をキラキラさせている反応がまさにそんな人に見えたので正直なことを言ったら、困惑するような様子をしたので補足をいれた。
ほら動画とかでよくあるじゃん。【現代入り~】って動画がさ。今ミヤリーはそんな境遇にいるんだよきっと。だから収集する情報源が今彼女にとって限りなく多いんだ恐らく。
「わ、分かったからそれじゃちょいとメシりながら行き先決めようか。……よしみんな食べたいもの決まったらあの受付の人のところに行ってくるよ私が」
注文が届き終わると、そこにちょうど4席空いていた席に腰掛け、今後のことを食事をとりながら仲間と相談し行き先を決めるのであった。
☾ ☾ ☾
「ではごゆっくり」
息抜き用に各々飲み物を頼む。
私はオレンジジュース、スーちゃんはぶどうジュース、他2人はコーヒーを頼んだ。
「愛理、スーちゃんはまだしもオレンジジュースって……何歳なの? ぷっ」
「わ、笑うなよ! いいじゃん何頼んでも別にさ!」
ちょいと拗ねる。
あぁ図に乗る棺桶少女がディスったおかげで、楽しみが半分になったじゃねえか。
比較すんなよ!
今だと大人のお子様ランチが作られるぐらいだし、もうそんな廃れた習わしいい加減に捨てろ!
案外愛理さん痛いところ突かれると豆腐メンタル化したり。
しなかったり。
どっちやねん。
「……そうですね、今日は時間なさそうですし近くに村があるのでそこに寄りましょうか」
RPG恒例のやつその1。
着いて早々進んだところに小さな宿だったり村がある。
まあ当たり前だよねぇ。
でも待って。
スーちゃんがここに住んでいたってことは。
「ねえ移動魔法使えば済む話なんじゃないそれ」
彼女に1つ尋ねると嘆息を1つ。
どうしたのさ、その呆れた顔つきは!
「……愛理さん、楽するより苦労した方がいいじゃないですか」
「え」
「『楽』するより苦労しながら楽しむそれが1番だと思うんですよ。ですから魔法は使いません」
ま、まさかスーちゃんってじっくり派な人だったの?
私もその部類に入ってはくるのだが。
同盟がここにいるとは予想外だ。まあ分かるよゲームでチートばかり頼るアホみたいなものだからね。それ。…………でもそれだと魔法使いっていう存在自体がチートだから彼女の言っていることには少し矛盾がある気がするけど。
まあ細かいことはいいや。彼女なりのこれはプライドみたいなものだろう。
「ズルはよくないからね、その気持ちよーくわかるようんうん(こくこく)」
面白みがなくなれば、それこそクソチート厨の称号を与えられかねん。
ここは正統ルートで冒険を楽しむことにして。
「……はあ本当なんですか?」
「大丈夫ですよスーさん、愛理さんも口は悪いですけどやるときはやりますよ」
さらっと私を悪いような言い方しないでくれるかなシホさん。
それだと私がいつも引きこもりみたいな言われようじゃないか。
「……それならいいんですが、おねだりしないでくださいね愛理さん」
「私はクレクレ厨じゃないからその辺は安心してくれ」
「……クレクレチュウとは聞きなれない言葉ですが、承認したということでいいですかねそれは。……では目的の場所村まで歩いていきましょうか」
ものの理解力半端じゃねえわやっぱこの子。
知能の高さから、本当に賢い子なんだろうな。
「んじゃひと働きするとしますか」
率先して進む私の後に、後ろに続く私のメンツ。
斯く。
途中休憩場所となるその村に向けて。
のんびりとしながら仲間と共に村へと向かうのだった。
さてさてどんな1週間旅行になるのやら。
これが凶と出るかそれとも吉とでるのか。私の想像皆無ですはい。




