249話 うさぎさんたち、協会の人達と会う その1
【めちゃくちゃ遠回りしているけれど、やるしかないときはやるっきゃない】
扉をくぐる。
「右……左よし」
左右危険がないか見回すと
次の部屋へと入った。
着いた先は。
「今度は…………これは
また変わった部屋に出
ましたね」
最初にそれを見て
シホさんが見上げ答え
てみせる。
「動くブロックに、宙に浮か
ぶ島かぁ」
「これって酔うやつじゃね」
転々と大きな立方体が浮
かんでいる。
大中小と大きさは多様
で、異星にでも迷い込んだ
ように思えた。
「? ねぇ今体押さなかった」
「何言ってんの、風でも当
たったんじゃない」
そうかな。
変な話に聞こえる
かもしれないけれど
踏み入った瞬間
誰かに押されたような
感覚を覚えたんだよね。
あれって気のせい?
「……私もさっき
そのような感覚が……」
「でもそのような仕様
なのでしょう」
再び歩き始めようとした
その時だった。
「スーさん」
「なんですか?」
「どうして足を下げてい
るのですか?」
「何言ってるんですか……そんな
そん……な?」
不思議に思い、騙された
ように足下を見た。
踏み込んだ足は
なぜか、後ろへと下がっていた。
「下がってるね」
「そ……そんなはずは」
再び踏もうにも
足は逆方向に動く。
試しにこちらも適当に
体を動かしてみる。
拳を前に──。
カーンッ!
何か後ろで勢いよく
ぶつけた感触が……。
「いって、なんなんだ……」
腕は前
ではなく後ろ側へ。
そこにいたミヤリーの
顔面を肘打ちで
潰してしまっていた。
あやべ。
「な……なんなんだって
セリフはこっちよ……ぐふ」
そのまま倒れ込み。
再び起き上がって。
「なにやってんのよ! 急に肘
なんて突いてきて」
「また、私をこんなときに限って
遊んでいるの⁉︎」
眉間にシワを寄せ
ツバが同時にかかってくる。
きたね。
それはそうと
今回はやっていない
つもりなのに。
やはり違和感がある。
でも向こうにある四角。
その孤島は、普通に動いて
いるんだよね。
どして?
「いや攻撃したつもり
ないけど」
「そんなの言い訳……でしょ!」
「言い訳と良い訳ない
をかけてんの?」
しょーもない質問で
少し探りを入れる。
「んなことあるかッ!」
「からかうなんていい
加減に……」
「うん、平常運転だな」
精神状態に問題はない。
ただ気掛かりなのは
体の動きとは反対の動き
を取っていること。
「……もしや」
「うん? 何かわかったの」
気づいたことでもあった
のだろうか。
閃いた彼女は、そう答える。
「……足を下がるよう動かして
みます」
今度は体で試す。
先ほどとは違う、あえて
いつもとは逆の動かし方。
そうやればどうなるのか。
あらまし、想定はつくが。
結果は。
「…………足が進んだ、進みましたよ」
下がろうとしたら逆に
足が前に出た。
「どうやら動かそうとした
方向とは真逆に
体が動いてしまうみたいですね」
「んだよ、まーた
めんどくせーやつ!」
「なるほどね、でも
頭おかしくならない?」
単純に体が動かしづらい。
だがその動かしづらさ
がネックだ。
これだと魔物に攻撃すら
まともにできないように感じる。
でも口はちゃんと動かせて
いるな。
……最低保険かこれ。
「どこかに仕掛けがあるは
ずですよ」
「仕掛け……仕掛け」
小振りするように
なれない動きで身動きをする。
機械人形みたいで
やや体の動きがみんな
不自然だ。
しかたない。
体が逆方向に動くのだから。
私も人のことも言えない。
周りに変なもの。
あたりには草木が生えて
いる。
自然と何ら変わらない景色で。
その中で
ふと気になる部分を見つける。
「あれはランプ? ……でも普通の
ランプではなさそうな」
木々の中に、さりげなくひし形の
ランプが宙に浮いてあった。
……いやこれは
宙に浮いている
と表現したほうが正解かな。
あれは何に使うものだろう。
「愛理さん、近づいてみますか?」
「近づくもなにもそうやる以外
方法がない一本道じゃね?」
「いえ……ここは私が」
先に出たのはスーちゃんだった。
向こうを凝視し観察する。
「あれは……どれどれ……うぅ
やっぱり間違えてしまう」
動かすのに不便さを覚えつつも
魔法で鏡のような物を出現
させた。
カメラレンズのような
ものだろうか。
指で摘むとその部分が拡大
化され大きく見える。
「……」
「それってなんですか」
「向こうを拡大化させて
見る鏡の魔法です。小さくも
できますよ」
やっぱカメラレンズじゃん。
「肉眼で確認できないくらいの
極小サイズの物でもこれなら
見れますよ」
顕微鏡の機能もあるゥゥゥゥウウ⁉︎
つまり相当な高画質を持った
魔法ってことだな。
拡大と縮小を指で摘む
ように動かし観察する。
「ふむ……なるほど」
険しい顔も時々浮かべながら
仕掛けを解く鍵を見つける。
観察し始めて数分。
「? これは。見てください」
「……ランプに模様がありますよ」
身を乗り出して見る。
赤い矢印と青、緑の矢印。
これどこかで。
……どこだったっけ。
思い出せそうなのに
なぜかダメ。
ひとまずおいておこう
かな。
「これって直接触らないとい
けないものでは?」
「それはそうだけれど
大丈夫なの?」
モンスター湧きなどは
起こらないでほしい。
「直接近づかないと
厳しいですかね、距離が距離
なので……」
間合いは数十メートルはある。
「ジャンプしようとしたら
どうなるのかしら…………
あやっぱり、しゃがむのね」
緊張感ないヤツは放っておいて。
「任せられる?」
「……正直めんど……大変
なので」
聞き逃さなかったぞ。
急に口滑らせて何言ってんだ。
「今さらっとメンドイって
言おうとしたでしょ」
「さ、さあ? 気のせいじゃ
ないですか」
ごまかしてもダメだよ。
視線を横目にやって
はぐらかそうとしているけれど
……まあいいや、こっちが年上
なんだし大目に見てあげよう。
「それはさておき大変
ですがやってみます」
スーちゃんは歩き出す。
小刻みに足音を立て
渋々とした顔が
相当嫌そうに見えた。
「……」
時折、目配せしてこちらを
見てくるが。
うん、頑張って。
「はあ」
距離を詰めていく。
慣れない逆方向の進み方
というのは、ここまで頭を
痛くさせるものとは。
「思ったんだけどさ、
スーちゃん魔法でなんとか
ならない?」
たしかにそうか。
呆然としながらなにを言
い出すのかと思えば
そのことか。
「例えば飛ぶ魔法とか」
「……その手がありました
ナイスですミヤリーさん!」
するとその場で立ち止まり
数秒。
彼女の体は地から離れる
ようにして浮き出す。
「普通に進める……これなら」
難なく思い通りに体を
動かせるみたいだ。
機敏にいつも通りの早さで。
魔力関係だからか?
歩くなどは手足でないと
無理だが魔法は物理的な
ものではない。
……脳筋パーティーだったら
詰んでいたかもな。
例えば全員シホさんとか。
……いつしかの夢で見たような。
もうあれは思い出したく
ないけれど。
「上には違う島……ですか」
真上上空には違う四角い島
の底が見える。
彼女の眼前には謎の装置が。
「さてどれから押しましょうか」
ようやく近づく。
3色のボタンを押すとどうなるか。
「この緑のボタンは?」
ポチ。
「うわわわわ‼︎ 床が縦向きになった」
「落ちる、落ちます!」
回転するように向きが縦になる。
視点が急に変わった
ものだから
一瞬酔いそうになる。
流れるようにしてスーちゃん
のいる方向へと落ちていく。
やばい、ぶつかる!
「……木があったので
間一髪でした」
「もう一度押すと?」
再び緑のボタンを押す。
「……も、戻った?」
「し、死ぬかと思ったわ」
向きが元に戻る。
「おや、なぜ青のところ
押した状態ですね」
気になって押す。
「……あれ、体が普通に動かせる
ようになってるぜ?」
反転した動きが元に
戻っていた。
ロジックがだいぶ
飲み込めたかもしれない。
これで操作して方向を
変えられるのか。
そうだとしたら……。
(もしかしてあれは……島の制御装置
みたいなものか?)
薄々と何かに気づいてきた。




