248話 うさぎさんたちと、協会の人からの挑戦状 その3
扉の中へと踏み込む。
長く続く道は
私たちを迷わせ、足を重くさせる。
「長い道のりですね」
「本当にこの道終わりが
あるのかしら。ずっと同じ道ばかり
のように思えるんだけれど」
十字の道は何度も通った。
しかし、これといって変わった
場所はなく
ただ進むべき方向を
迷わせた。
妙だ。
同じ壁……いや
ダンジョン、迷路なら当然の
ことだが。
「……どうしたんですか、愛理さん?」
「ああちょっとね」
さすがに入ってから何分
も変化なしで進んでいない
なんて、あきらかにおかしい。
違和感に気づいた私は
ふと適当な壁に耳を当てた。
フュー。
隙間風。
ただ道を間違えているだけか?
「ラビットパンチ」
あれ。
「ぐわ」
強行突破しようにも
見えない違う壁かに弾かれる。
「……ダメです、魔法でもびくとも
しませんね」
魔法を使っても結果は
一緒だった。
かき消されてばかりで
防犯対策に隙なし。
正当以外通さない気だ。
「あぁでもどうやれって
言うんだよ」
「魔法の知恵に準備なし……
そういうことですか」
「スーちゃんスーちゃん
なにそれ」
「あぁグリモアに伝わる
ことわざですよ」
「守りが盤石ならば
いちいち準備する必要はない
そう言う意味です」
魔法を含むことわざ
初めて聞いた。
でも意味を説明されたら
どこか納得がいった。
「それがどう結びつく
んですかね」
「ダンジョンは十分強固な
『壁』になっているんですよ……」
「仕掛けの準備なんぞ
いらないぐらい強固な罠をね」
「つまりどーういうことなの」
「あぁスーちゃん、準備は不要
なくらいの罠があるって
ことかい?」
さっきからの違和感。
その違和感にやがて浮き彫り
になってくる。
確証は持てない。
だが微かだ。
先ほどからなにかに
見られているような気がする。
……。
もしこれが本当なら。
ひょっとすると
もうなっている
かもしれない。
「いえ、もうすでに
……術中にはめられているかも
しれませんね」
「このダンジョン事態が大きな
罠だったり」
シュー、シュー。
?
なにか音がする。
「なんですか、なにか近づいて
……スーさんッ!」
「っ! こ、これは攻撃⁉︎」
不覚にも何かが
魔法か何かしら攻撃手段で
スーちゃんの足元に
攻撃がかかる。
危機を察して軽く宙返り
してかわす。
再び着地すると
寄せ合うように手のひらで
合図を招くように出した。
「……なんでこうもイヤな
予測が当たるのでしょう」
「気をつけてください
……攻撃されています」
「!」
トントントントンッ‼︎
「なんだ急にっ‼︎」
私を何度も叩くように
攻撃。
防ぐように腕を折りながら
耐える。
だが実態は掴めない。
「ど、どこだ」
「私にもわかりません、いくら
身構えていても実体が見えません」
シホさんの身を持ってしても
姿が見えないらしい。
「でも耳で感じることは
できます。1、2、3、4……
複数体いるみたいですね」
見えない敵が相手か。
しかもそれが複数。
「どうりで変だと思ったんです
……ありがとうございます
シホさん」
「でも愛理さん、ただの
臆病者ってわけじゃない
みたいですよ」
隠れているだけ
じゃあない?
「攻撃で少しわかった
ことがあります……あれはファトム」
「体を自由に透明にできて
かつ、実体のある幻影を作る
厄介なモンスターですよ」
本物の壁とニセの壁を
作って視覚的に壁であるように
見せて
私たちがあえて
ずっと行き来できるルート
を作っていたということか。
「だからさっきから一切
進まないわけですよ……
油断していました」
少々しかめて悔しがりな
顔を見せる。
してやられたってことか。
味な真似をしてくれるな。
「やってくれるじゃあ
ねぇか。これぐらい強く
ないと面白くねぇ」
「愛理笑ってる? 押され気味
なのに笑ってる……なんでなの」
「そうですね……試練
というのであれば一筋縄
ではいかないようにしないと」
同情するように笑う。
それは闘士を燃やすような
目つきで
やる気に満ち溢れた
目つきだった。
さて。
そうなれば。
「一人相撲……だと
悪いしそうだな」
ふと隠していた
ラビガジェを取り出すが
使うのをためらった。
(今はそのときじゃあねえ
……力に頼るんじゃあなくて
ここは力を合わせるほうが
重要だな)
でないと試練の意味
がまったくない。
乗り越える意味も
一切ない。
この試しはそのような
度胸を示す
場所でもあるだろう。
ならここはひとつ。
1人でできないことを。
ここを打開するための突破口
を一緒に考えようか。
スーちゃんに声をかけ。
「ねえスーちゃん、策はある?」
「もちろん、ないわけないですよ」
彼女を含め
みんなの眼差しはまだ
諦めていなかった。
「あるんだね策が」
「えぇ。……私たちだから
こそできる、とびっきりの
方法ですよ」
☾ ☾ ☾
道中見えない敵と接触。
拳で叩いても妨害を食らうしで
また厄介な相手だった。
【ファトム:古寂びの布を被った幽霊
日中姿は見せないが、常に体を透明
にして動く】
攻撃力はほとんどないみたいだが。
透明になって攻撃してくる
理不尽な戦法がクセモノらしい。
「おらっ」
ひゅ。
またかわされる。
追い討ちをかけるようにして
数体からの攻撃。
突くように食らうと
反撃する間もなかった。
「ちぇっどうやれっていうんだよ」
図鑑には肝心の弱点などの
記載がなかった。
ということは、今まで張り合っ
てきた冒険者は少ないのだろうか。
「……策はありますよ」
「でもまずはそのときを
窺いましょう」
そうは言われても。
先ほどから無意味に迷宮を
駆け回って避けているが
これに何の意味があるのだろう。
「テンプスじゃダメなの?」
「あれだと完全停止してしまうので
非効率です」
「重要なのは“動いている時”なので」
動いている時。
詳しくは語ってくれなかったが
ふと気づいてくる。
やつらの穴
そのものに。
攻撃した後
一瞬、砂煙が起きる。
そう、透明になっているのにも
かかわらずだ。
(なぜ透明にならない?)
もしかして
透明にできるのって。
……そうかスーちゃん、
そういうことなんだね。
真横で一緒に走る
彼女のほうを見て目配せすると
頷いてくれる。
「こくり。……察しがいいですね
愛理さん」
「ど、どういうこと。今
テキトーに走り回りながら
考えているんじゃなくて?」
「ミヤリーさん私もなんとなく
ではありますが気づきました
あとはスーさんがタイミング
を見計らうだけですね」
「あぁもう、私だけ置いてけぼり?
説明してよスーちゃん!」
ミヤリーだけは理解不能状態だった。
ここでスーちゃんが説明する
と思いきや。
「……いいえミヤリーさん
その必要はありませんよ」
「え?」
「……もう『下準備』は整いましたから」
立ち止まると
手に持つ杖の末端を地面へと突いた。
長い魔力の糸が現れる。
永遠と続くものが動く物体を
捉えると
「ストリプ……ッ!」
透明なものを一斉に巻きつけた。
そして魔法を導火線のように
流し込み。
「ウググ……」
魔法の圧力に押し潰され
「これは影? 影だけは透明に
なっていないわ」
「あぁ。姿は消せても“痕”は消せない」
「……苦労しましたよ、こんな広い
部屋を使って結束するだなんて」
しばらくすると姿が露わになる。
図鑑同様の見た目。
必死に解こうとするが魔法
に阻害されて思うように動か
せない様子だった。
「……さあ今ですよ」
縛っている間にトドメを
刺そう。
残っている敵に対して
「ラビット•キック、パンチ!」
「エクスクロスカットッ‼︎」
パンチとキック。
そして交錯から繰り出される
無数の斬撃を放つと
数匹のファトムは
力尽きて倒れる。
「やりましたね、お手柄です
スーさん」
「でもトドメは私とシホさん
だったな」
「んまあ今回もまた取られちゃった
けれどまあいいわ、相手が悪
かっただけよ」
また変な弱音吐いている
やつもいるけれど。
「……これで先へ進めるはずですよ
? 前に扉が」
先に進もうと振り向いた
その先には、どこからともなく
扉があった。
また先に進めということか。




