表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/73

会長からの話

『……警察は余罪がないか捜査しています。続いてのニュースです……』


 和葉は溜息をつくと、動画アプリを閉じる。その様子を見ていた彩夏が興味深そうに近づいてくる。


「どうしたの?顔色悪いけど」

「ああ、会長。聞いてくださいよー。昨日からニュースになってる食品偽造の件なんですけど、私あの唐揚げ好きだったんですよね……」

「ああ。冷凍食品の」


 ある会社が外国産の鶏肉を国産と偽っていたことが明らかになり、その鶏肉を使っていた冷凍食品が販売中止になった。元々、冷凍食品を滅多に食べない彩夏からすればあまり関係のない話だったが、オカルト研究会の愛すべきマスコット的存在には致命的なことだったようである。


 目に見えて落ち込んでいる和葉はそのうちいじけだすのではないかという勢いでうなだれていた。

 間違ってもここで「唐揚げなんて他にもあるじゃない」などと口にしてはいけない。以前、別の話題でうっかりそう口にした彩夏は和葉が受けたショックの大きさにショックを覚える程だった。


 かといってこのまま放置していてもそれはそれで落ち着かない。別に和葉は八つ当たりをするタイプではなく、すぐに切り替えられる方なのだが、それでも普段から明るい人間が暗くなっているのは見ていられなかった。


 彩夏は何気ない素振りで和葉の近くに座ると、野菜ジュースを飲みながらぽつぽつと語り始める。


「そう言えば、こんな話があったんだけどね……」

「ちょっと待ってください、会長!もしかして怖い話ですか!?あの会長が自ら!?」


 急に元気になった和葉が食い気味に彩夏に迫る。ただならぬ様子に、周りにいた後輩達がざわざわとし始め、関心を寄せてくる。

 すっかり元通りになった和葉に苦笑しつつ、今更止める訳にもいかないと彩夏は腹をくくった。


「別に怖い話って訳じゃないけれど。でも、不思議な話なのは間違いないよ」




 私がオカルト研究会に入ったばかりの話なんだけどね。その時も食品絡みの話があったのよ。ただ、こっちはもっと大変で、人体に有害な化学物質が混入していたの。

 あら、よく覚えてるわね。そう、シューマイの件。でね、二個上の先輩がそのシューマイの大ファンだったの。

 だから当時はちょっとした騒ぎになってね。先輩は大丈夫なんだろうかってみんなで心配してたの。またその先輩がいわゆるサボり魔で、授業にも滅多に顔を出さないし、オカ研にもふらっとやって来る程度だったから、安否確認をしようにもできなくて。


 そんな先輩なんだけど、その日のオカ研にいつものようにふらっとやって来たのよ。勿論「大丈夫ですか」って私達は声を掛けたんだけど、ケロッとしてたのよね。でもその後に話し出したことが奇妙だった。


 先輩は認知症のおばあちゃんの世話をしながら暮らしてたんだけど、お母さんが「ちょっと手を抜きたいから明日は冷凍食品のシューマイにしよっか」ってお父さんに言った瞬間、そばにいたおばあちゃんがすごく暴れまわったんだって。

 先輩もご家族もびっくりしたらしくて、最初は何かの発作だと思ったらしいんだけど、慌てて駆け寄ると、ぴたりと静かになったの。

 何だろうと思いつつも、明日の晩御飯の話を始めるとまた暴れ出すの。で、先輩が思わず聞いたらしいのよ。「ばあちゃん、シューマイ嫌いなの?」って。

 そうしたら、すごい勢いで大きく頷いたんだって。でも、おばあちゃんがシューマイ嫌いだったなんて実の娘であるお母さんも知らなかったらしくて、ただ驚いていたそうなの。


 で、何となく気味が悪いから明日は別の献立を考えようって話になったらしくて、その日はそれで終わったのよ。


 シューマイに化学物質が混入していたってニュースを見たのは三日後のことだったの。


 ね?怖くなかったでしょう。でも、とても不思議な話なのよね。どうしておばあちゃんはそのことに気付けたのか。




 彩夏が話し終えると、和葉はごくりと唾を飲み込んだ。そして周りで聞いていたメンバー達も神妙な顔つきで聞き耳を立てていた。


 その光景に少し驚きつつも、和葉がすっかり普段通りになっていることに彩夏はホッとした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ