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2-12 たかい!

 建設作業に勤しみながら、つらつらと考えているうちにふと気づいた――。


 つーか、オレどうやったら元の世界に帰れるんだろ?


 比呂子さんは何事もないように消えていったけど……。

 なんか呪文とかコマンドとかあるんかな?

 それだったらお手上げだけど……そんな大切なこと伝え忘れないはず、だよな。

 てことは、やっぱり……。

 クリアしたら帰れるってことか。

 でも、逆に言えば、それはクリアしなきゃ帰れないってことだ。元の世界に戻れないってことだ。

 こんななにもない世界に囚われとかシャレにならんな……。


「ナメてると死ぬぞ」


 比呂子さんの脅しの言葉を思い出してゾッとする――。


『魔王を倒して世界を救う』


 それがオレの仕事だ。

 でも、そのためにどうしたらいいか皆目検討もつかない。

 比呂子さんとの話では、文字どおりの意味での『倒す』わけじゃあないことはわかったけど……。

 現状のオレは魔王であるサタン子ちゃんと砂遊びしてるだけだ。

 本当にこれでいいんだろうか?


 ――いや、大丈夫。比呂子さんはこうも言っていた。


「今日は体験版のレベル1だ。フツーにやりゃー平気だって」

「お前のやり方でやってみ」


 オレのやり方でやるだけだ。

 砂場があって、そこにちいさな女の子がいる。

 だったら――。

 遊ぶ。一緒に遊ぶ。真剣に遊ぶ。本気で遊ぶ。

 それ以外にどんな選択肢があるっていうんだ?


 ――サタン子ちゃんの横顔を眺め見る。

 真面目な顔で黙々と手を動かしてる。本気で遊んでいる。

 見習わないとな……。

 オレもムダな思考は止めにして、無心での山づくりを再開した――。






「――よし、これくらいにすっか」


 何時間たっただろうか?

 気がついたら、山の高さはオレの背丈ほどになっていた。


 別にノルマがあるわけでもないし、終わりがあるわけでもない。

 もっと早く切り上げることも出来たし、永遠に続けることも可能だ。

 結果ではなくて過程が全て。それが遊びと作業の違いだ。

 けど不思議なもので、遊びには自然な止め時がある。止めるなら今しかない、そういった瞬間がかならず訪れる。理屈はわからなくても、身体で感じることができる。


 今がそのときだった。

 満足しきったオレはサタン子ちゃんを見やった。

 サタン子ちゃんも同感だったようで、「うん」と頷き、ペタペタやっていた手の動きを止め、立ち上がって、てっぺんを見上げた。


「でっけえ山できたなあ」

「でっけーやまできた」

「登るか?」

「のぼる」


 二人一緒だと崩れちゃうかもしれない。

 そう思ったから、サタン子ちゃんの両脇に手を入れて持ち上げ、頂上に降ろした。


「高いだろ?」


 オレがサムズアップとともに笑顔を向けると、サタン子ちゃんも笑い返してきた。

 はじめての笑顔だった―― 。


「たかい!」


 大きなアメジスト色の瞳を輝かせ、やわらかい頬を緩ませ、キラキラと眩しい笑顔。

 それまでの無表情とのとてつもないギャップの破壊力にオレの心は完全にもってかれた―― 。


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