2-13 どこで間違えたんだろう?
サタン子ちゃんの満面の笑み。
ヤバイ。チョーウレシー。
――思い出した。
ぼっちをこじらせていたオレは忘れていた。
誰か一緒に遊ぶと楽しいってことを。
ひとり遊びとは別次元の楽しさを。
それを忘れていたことを、たった今、思い出した。
子どもの頃から自分がぼっちだった。
そうオレは思い込んでいた。
でも、そうじゃなかった。
子どものオレは知っていたんだ。
それをいつの間にか忘れてしまった。
そして、知らないフリをしていたんだ。
……すっぱい葡萄じゃないか。
こんなちっちゃい子に教えられるなんて……。
どこで間違えたんだろう?
どこで道を踏み外したんだろう?
心が揺さぶられ、意図せず涙が溢れた。
けど、それはすぐに収まった。
最初の感情が上書きしてくれたから。
嬉しかった。
後悔よりも喜びの方が圧倒的に大きかった。
思い出せて良かった。
出会えて良かった。
オレは両目を拭った。
悲しい顔なんか見せられない。
小さな山の頂から遠くを見つめるサタン子ちゃん。
その笑顔をオレ自身も笑顔でしばらくの間見守り続けた――。
「おりる」
ずいぶんと長い時間が経った後、サタン子ちゃんが口を開いた。
オレはサタン子ちゃんを抱え降ろした。
「どうだった?」
「たかかったひろかった」
「満足したか?」
「さたんこまんぞくした」
「ゆーさくぱぱ」
「ん?」
「またあそんでくれる?」
「ああ、もちろんだ」
その言葉に安心したのか、サタン子ちゃんが寄り添ってきた。
オレはサタン子ちゃんの頭をやさしく撫でた。
サタン子ちゃんは目を閉じ、されるがままでいた。
泥まみれになっていても損なわれない、その細い黒髪の魅力をオレはしばし堪能した。
そして、オレの手が動きを止めると、唐突にサタン子ちゃんから別れの言葉が――。
「さたんこかえる」
「気をつけて帰れよ」
「さたんこきをつける」
「また遊ぼうな。約束だぞ」
「さたんこまたあそぶ」
「じゃあな、バイバイ」
「ばいばい」
どこに帰るのか?
どうやって帰るのか?
オレはどうやって帰ればいいのか?
そんな疑問が頭をよぎったけど、無粋だと思ったから口にはしなかった。
お互い向き合って、手を振り合う。
別れの名残りを惜しむオレを置き去りにして、サタン子ちゃんはそっと消え去った――。
はああ、つかれた。
忘れていた疲労が今さらオレの全身を包み込んだ。
思わず座り込む。
頭を垂れるとほぼ同時に、まぶたも重くなっていき、オレは意識を手放した――。
今回で第二章体験勇者バイトは終了です。
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明日から第三章スタートです。
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