2-11 いとうつくし
比呂子さんがいなくなって、オレとサタン子ちゃん二人きり。
オレたちは砂場の縁に並んで座り込んだ。
でも、丁度いいタイミングだった。
あれ以上続けてたら死んでまう。
サタン子ちゃんも充分満足したのか、それ以上の「もういっかい」はなかった。
無関心そうに振るまいながらも、しっかりと見てくれるいるんだもんなあ。
それに見極めのタイミングも完璧。
つくづく比呂子さんには頭が上がらないや。
「ゆーさくぱぱ?」
「!?」
黙り込んでいたオレにサタン子ちゃんが呼びかけてきた。
あー、もう、比呂子さんのせいで……。
まさか魔法使いのままで父親役をやるハメになる日が来るとは想像もしていなかった…………。
だけど、こっちを見上げるサタン子ちゃんの顔を眺めていると、なかなか悪い気はしなかった。
そりゃあ、ふつーの男の子としては、ちゃんとした年齢の女の子と恋愛したり、イチャイチャしたり、そういう方が嬉しい。というか、そういうことが切実にしたい。
けど、こういう関係もまんざらじゃないな――。
念のために釘を差しておくけど、性的な要素は皆無だからな。
幼女と成人男性の組み合わせってだけでそういうこと考える奴の心が腐っているだけだからな。「Yes! ロリータ No! タッチ」だからな。
「どーしたの? ゆーさくぱぱ?」
「いや、どうもしないよ。サタン子ちゃんはまだ遊びたい?」
「あそびたい」
「さあ、次はなにしようか?」
こうなりゃ、パパ役になりきるか。
不思議なもので、ダイブごっこしたり座り込んだりしてるうちに、砂場の水もだいぶ引いた。これも異世界クオリティーか?
泥水プールだったのが、 適度に水を含んだ硬さになっていた。
ちょうどいい塩梅だ。
「よし、山つくるぞ」
「やま?」
「ああ、でっけえやつをつくろう」
「さたんこ、やまつくる。でっけーやつつくる」
「おう!」
「おう」
オレの掛け声とオウム返しのサタン子ちゃんの声。
それを合図に、二人での山づくりが始まった――。
シャベルもスコップもないから、両手で掬って積み上げるだけ。
非効率な方法だけど、山をつくることが目的じゃないから無問題だ。
目的は、山づくりを楽しむこと。楽しむことだけが遊びの唯一の目的だからな。
サタン子ちゃんも見まねで、一生懸命ちいちゃなおててでペチペチやってて、いとうつくし。
目に髪がかかっているのにそれを払いもせずに、首を傾けてやってるのも、うつくし。
お互い無言になり、泥を積み上げる単調作業を無心で繰り返す。
やべー、めっちゃ楽しい。
二十数年ぶりの、このなんの役にも立たない行為が無性に楽しかった――。
そう言えば、休日の公園で子どもと砂場遊びをするパパさんたちを何度か見かけた。
大抵のパパさんは子どもを砂場で遊ばせて、自分はベンチでスマホいじってるだけだった。
だから、砂場遊びするパパさんは子育て熱心なパパさんなんだな。イクメンなんだな。イケメンでイクメンとか、リア充爆発しろ!
そう思っていた。
けど、もしかしてパパさん自身が楽しく遊んでただけなんじゃないか?
そのことに今さらながらに気づいた――。




