第80章:反逆の指輪〜奪われた人生と、法廷への宣戦布告〜
「な、なんなのこれ……! どういうことなの!? 誰か、説明してよ!!」
巨大スクリーンに映し出された数々の黒い証拠と、自分の醜いワガママを録音した音声。
さっきまで会場中に響き渡っていた如月あやめの勝ち誇った高笑いは完全に消え去り、彼女は顔面を蒼白にしてドレスの裾を握りしめながら叫んだ。
政財界の重鎮たちが怒号を上げ、会場が修羅場と化す中。
あやめの隣に立つ新郎・貝森拓人だけが、氷のように静かな瞳であやめを見下ろしていた。
「……どうして、こんなことをしたの?」
拓人の低く、けれど会場の喧騒を切り裂くようなよく通る声に、あやめはビクッと肩を震わせた。
「俺の実家を潰してまで……本当に俺と付き合いたいなら、周りを巻き込まずに直接言ってくれればよかったのに」
「た、拓人さん……ちがっ、これは……!」
言い訳を探して後ずさるあやめを一歩追い詰め、拓人は静かな怒りを込めて言葉を紡ぐ。
「スーパールッツを倒産に追い込んだのも、全部君のわざとだよね? ……君がうちをめちゃくちゃにしたせいで、今ではあの南条の『激安スーパー』に、みんな買い物いっちゃうんだよ」
拓人の口元に、自嘲気味な笑みが浮かぶ。
南条隼人の率いるスーパーは、ルッツが失った顧客をあっという間に吸収し、業界のトップに君臨した。
「あっちは庶民の味方だから、客が流れるのは仕方ないけどね。……でも、君のくだらない嫉妬のせいで、俺の家族も、会社の従業員たちも、すべてを奪われたんだ」
拓人の声が、ふいに限界まで張り詰めたように震えた。
「俺の人生を返してよ。……かすみちゃんとの、普通で幸せだった思い出も返してよ」
その言葉と同時に、拓人は自分の左手薬指にはめられていた、如月財閥が用意した何百万円もする高級な結婚指輪に手をかけた。
ためらいなく指から引き抜くと、冷たい金属の音を立てて、大理石の床へと無造作に投げ捨てる。
カラン……と虚しい音が響き渡る中、拓人は完全に崩れ落ちたあやめと、顔面蒼白の如月大和に向かって、冷酷なまでにハッキリと告げた。
「この結婚は破棄だ。徹底的に法的に争うから、そのつもりで」
それは、あやめの仕掛けた悪意のゲームが完全に終わりを告げ、貝森拓人という一人の男が、自らの手で人生を取り戻した瞬間だった。
81章に続く、いよいよ如月財閥の今までの悪行が法的であきらかになります




