第78章:破滅のウエディングベル〜捨てられた招待状と、孤独な反逆者〜
ついに、私が最も恐れていたその日がやって来てしまった。
今日は、如月あやめと貝森拓人の結婚式当日。
私は自分の部屋で、ゴミ箱の奥底に丸めて捨てられた分厚く華美な招待状を、冷たい目で見下ろしていた。あやめの名前が刻まれた文字に目を通すのすら吐き気がしたのだ。
拓人くんが別の女性と永遠を誓う場所になんて、絶対に行けるわけがない。私はただ、この部屋で一人、息を殺して時間が過ぎるのを待つことしかできなかった。
同じ頃、南条財閥の豪奢な屋敷にも、あやめからの悪意に満ちた招待状が届いていた。
「……馬鹿げた茶番だ」
若きCEO・南条隼人は、冷徹な目でその招待状を一瞥すると、かすみを連れて行くことはせず、ただ1人で結婚式に出席する準備を整えていた。
彼は知っていたのだ。あやめがかすみを招待したのは、自分の勝利を見せつけるための下劣な罠だということを。だからこそ、自分の所有物であるかすみに他の男の結婚式など見せる必要はないと、隼人は冷酷に判断したのである。
そして――。
政界・財界のトップたちが大勢集う、都内最高級ホテルのウエディング会場。
純白のドレスに身を包んだ如月あやめは、完全なる勝利の喜びに酔いしれ、参列者たちに向けて高笑いを隠しきれないほどの満面の笑みを浮かべていた。
しかし、その隣に立つ新郎・貝森拓人の瞳には、絶望ではなく、静かで鋭い『反逆の炎』が宿っていた。
(……さあ、いよいよだ)
拓人のタキシードの胸ポケットには、如月財閥が拓人の実家である『スーパールッツ』を計画倒産させた真実、そして大和の配る『毒饅頭』の黒い繋がりを示す全ての『闇データ』が入った端末が隠されている。
拓人は今日、あやめの犬として大人しく結婚するためではなく、この政財界の重鎮たちが一堂に集まる絶好の晴れ舞台を、完全に『台無し』にする計画を立てていたのだ。
式のクライマックス、最も注目が集まるその瞬間に、如月財閥の全ての闇を発表(暴露)し、あやめを絶望のどん底へ叩き落とすために。
華やかなウエディングベルが鳴り響き、大和パパや愛人秘書が余裕の笑みを浮かべる中、孤独な反逆者・拓人の命がけの復讐劇が、今まさに幕を開けようとしていた――。
79章に続く




