第73章:悪女の招待状〜見せつける純白と、最強の同伴者〜
如月財閥が貸し切った、都内でも最高級のブライダルサロン。
あやめと拓人の結婚式の打ち合わせは、あやめの思い通りに着々と進められていた。
「ねぇ拓人さん、やっぱり納屋かすみ様にも招待状を出さないとよね?」
最高級のシルクで仕立てられた純白のウエディングドレスの試着を終えたあやめは、鏡越しに拓人を見て、甘くねっとりとした声で微笑んだ。
「うふふ、だって……私がこんなに幸せで、きれいなドレスを着ている姿を、かすみ様にたっぷり見せびらかすためよ!」
その無邪気を装った残酷な言葉に、ソファーに座る拓人はピクリと眉を動かしたが、すぐに無表情を取り繕った。拓人の手の中には、如月の闇データが確実に集まりつつある。今はまだ、この悪女の前で従順な犬を演じ切らなければならない。
「……好きにすればいい」
感情を押し殺して短く答える拓人を見て、あやめはさらに極上の思いつきをしたようにポンと手を打った。
「あっ、そうだわ! 南条隼人さんにも同席してもらいましょうよ。だって、かすみさんの『婚約者』ですものね?」
あやめのその言葉は、拓人の心臓を鋭いナイフでえぐるような一撃だった。
あやめはすべて知っているのだ。かすみが今、激安スーパー帝国の御曹司であり、冷徹な帝王となった南条隼人の手の中に落ちていることを。そして、拓人がそれをどれほど憎悪し、絶望しているかということも。
自分から拓人を奪い、さらにはかすみを南条隼人という鳥籠に閉じ込めたこと。そのすべてを『結婚式』という晴れ舞台で同時に見せつけ、完璧な勝利を味わおうというあやめの底知れぬ悪意。
「……ああ、そうだな。それがいいんじゃないか」
拓人はギリッと奥歯を噛み締め、血の滲むような思いで同意の言葉を絞り出した。
かすみを絶望の底へ突き落とすための、最も残酷な招待状。それが今、密室で隼人の腕の中に囚われているかすみの元へ、確実な足音を立てて迫ろうとしていた――。
74章に続く




