第71章:残酷な宣告と予期せぬ縁談〜激安スーパーの御曹司・南条隼人〜
ふかふかのベッドの上で、南条隼人の腕の中に囚われたまま、かすみは霞む意識の中で「どうして自分が南条財閥の屋敷にいるのか」を静かに思い出していた。
――すべては、あの残酷な宣告から始まったのだ。
高校を卒業し、かすみと貝森拓人は別々の大学へ進学した。拓人が通うのは、誰もが憧れる超名門ツンベルブリッツ大学、離れ離れになったことで会えない日が増え、かすみの胸には少しずつ不安が募っていた。
そんな時、風の噂で『如月あやめが貝森拓人と付き合っているらしい』という話が耳に入ってきたのだ。
(やっぱ、別々の大学に通うとそうなるよね……?)
そう自分に言い聞かせ、不安を押し殺そうとしていたかすみの前に、決定的な悲劇が訪れる。
ある日、かすみの通うサファリア女子大学のキャンパスに、如月あやめと貝森拓人が突然現れたのだ。
あやめは拓人の腕にベッタリと絡みつき、かすみの目の前で堂々と、そして勝ち誇ったように言い放った。
「私達、交際しているの。かすみさんにも報告しておこうと思って」
隣に立つ拓人は、まるで心を失った操り人形のようにうつむき、何も語ろうとはしなかった。
ショックのあまり目の前が真っ暗になったかすみは、逃げるように納屋財閥の邸宅へと帰り、部屋で一人泣き崩れた。拓人との普通の恋は、完全に終わってしまったのだと。
しかし、財閥の令嬢であるかすみに、立ち止まって悲しむ時間は与えられなかった。
翌日、傷心のかすみを待っていたのは、両親が強引にセッティングした『南条隼人との縁談』だった。
南条財閥――。
それは、全国にチェーン展開し、圧倒的な価格破壊で庶民の生活を牛耳る『超・激安スーパーマッツウィックス』を一代で築き上げた巨大企業である。
その激安スーパー帝国の御曹司である南条隼人は、サファリア女学院時代からかすみに一方的な好意を寄せ、毎年赤いバラでキザなプロポーズを繰り返してきた、あの『ツリンベッティー学園の元王子様』だった。
縁談の席で、冷徹な若きCEOとして成長した隼人と再会したかすみ。
しかし、無理をして気丈に振る舞おうとしても、心はもうボロボロだった。拓人とあやめの交際宣言を聞いたあまりのショックと、失恋の絶望がここでついに限界を超え……かすみは糸が切れたように、その場でパタリと倒れてしまったのである。
「……だから僕は、君をこの部屋に連れてきたんだよ、かすみ」
微睡むかすみの耳元で、激安スーパーの御曹司であり、今や絶対的な帝王となった隼人が低く囁く。
彼の腕の中という、甘くも逃げ場のない密室で、かすみは静かに絶望の涙をこぼすことしかできなかった。
第2シリーズ72章に続く




