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サファリア女学院から青藍高校へ潜入!? 〜お嬢様の「普通の恋」は、完璧な執事が絶対に許しません〜』  作者: 琥珀かえで


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第64章:激突する二人の男、ポケットの指輪とパジャマパーティーの幻影

南条財閥の広大な屋敷のド真ん中で、私の専属執事・長谷部誠が放った、禁断の叫び。

「……かすみは、俺の女だ」

その言葉が響き渡った瞬間、屋敷の空気は一瞬で沸点へと達した。

もちろん、マッツウィックスの若き総帥(CEO)である南条隼人が、それを見過ごすはずなど毛頭なかった。隼人の冷徹な瞳にドス黒い怒りの炎が灯り、誠の狂気に対して真っ向から応戦する。

「一介の執事が、僕の未来の妻(婚約者候補)に向かって随分な口を利くじゃないか、長谷部誠。かすみさんは今、僕の南条財閥の庇護下にある。身の程をわきまえて、今すぐその薄汚い手を彼女から離してもらおうか」

「身の程だと? お嬢様を最も近くで支え、その身も心もすべてを知り尽くしているのはこの私だ。南条隼人、あなたのような男にお嬢様を渡すくらいなら、私はこの身が滅びようとも、お嬢様を私の檻へ連れ戻す……ッ!」

メガネを床へ投げ捨てて完全な雄の顔になった誠と、財閥の絶対的な権力でねじ伏せんとする隼人。二人のスパダリが私を巡って激しく睨み合い、今にも掴みかからんばかりの男の戦いを繰り広げている。

――けれど。

そんな二人の怒号が飛び交う広間のソファーで、私はただ一人、膝を抱えて別の世界に心を飛ばしていた。

私の右手は、そっと上着のポケットの奥深くへと伸びていた。

指先が触れたのは、ひんやりとした冷たい金属の感触。サファリア女子大であやめから婚約マウントを取られたあの日、自ら外したはずの、【貝森拓人さんからもらったお揃いの指輪】――。

私はまだ、あの指輪を捨てることもできず、ポケットの奥にしまったままだったのだ。

(どうして……。もう過去のことは、全部綺麗さっぱり忘れないといけないのに……)

男たちの怒声を聞きながら、たまにポケットの中で指輪の輪郭をなぞるたび、どうしてもあの楽しかった過去の記憶が胸の奥から溢れ出てきてしまう。

青藍高校のみんなと過ごした、あのきらきらした【パジャマパーティー】の夜の思い出。

あのチャラい二人組が場を盛り上げて笑わせてくれて、森野海斗くんもいて、メガネインテリの早瀬碧くんがクールにツッコミを入れて……。そして何より、隣にはまだ優しかった貝森拓人さんがいた。

みんなで夜通し語り合って、お腹が痛くなるほど笑い転げた、あの青藍高校時代の幸せに満ちた夜。

あの時、拓人さんは「一生かすみちゃんを幸せにするよ」と言って、私の薬指にこの指輪をはめてくれたのに。

(どうして今になって、あの青藍高校のみんなとのパジャマパーティーの楽しかった思い出が出てくるの……?)

涙がまたひとつ、ソファーのシーツに吸い込まれて消えていく。

倒産した実家を救うためにあやめの後ろ盾を選び、今ではあやめの言いなりになって思い出を処分している元カレ。裏では「駆け落ちしよう」と縋ってきた、身勝手な初恋の相手。

(……拓人のバカ。本当に、大バカ者……っ)

心の中でそう激しく罵っても、一度溢れた思い出の幻影は消えてくれない。

目の前で「俺の女だ」と暴走して南条家に宣戦布告する執事の誠さんと、私を抱きしめて「守る」と言ってくれるCEOの南条隼人。二人の激しい奪い合いの嵐の真ん中で、私はポケットの中の古い指輪をただ強く、強く握りしめることしかできなかった――。

第65章:誠の強制連行!?隼人のマッツウィックス包囲網と、引き裂かれる指輪の行方編へ続く

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