第62章:南条の城の平穏、最高峰の溺愛と義両親の約束
ホテルのラウンジでの、あの悍ましい如月あやめと貝森拓人の乱入劇から、しばらくの時が流れた。
私は心身の疲労の激しさから、しばらくの間サファリア女子大を休むことになっていた。
あの日、あの最悪の修羅場から私を力強く連れ出し、そのまま自分の財閥の城へと匿ってくれたのは、マッツウィックスの若き総帥(CEO)である南条隼人さんだった。
私が今、静かな療養の時間を過ごしているのは、一般の人間は立ち入ることすら許されない、広大でラグジュアリーな南条財閥の本邸。
そこに、隼人さんの実のご両親である南条虎之介と可憐の二人が、温かい微笑みを浮かべて直々に顔を見せてくれたのだ。
「あらら……すっかり痩せちゃって。あの貝森家のバカ息子と如月の泥棒猫のせいで、よっぽどショックだったのね、かすみちゃん」
お母様である可憐様が、私の青ざめた頬に優しく手を添え、まるで実の娘のように愛おしそうに目を細めた。
続いて、世界のビジネス界にその名を轟かせるお父様の虎之介様が、深く、けれどとても包容力のある声で私に頷きかけた。
「安心しなさい、かすみちゃん。もう君を傷つける者はここには誰もいない。君の実家である納屋財閥(あけみ様・薫様)には、後日、私達から直々にご挨拶に伺います。そこで――『納屋かすみさんを、正式に南条隼人の妻としてお迎えします』と、我が家の揺るぎない決意をしっかりとお伝えしますからね」
「南条、様……っ」
かつてはライバル店の御曹司として激しくぶつかり合ったはずの南条隼人さん。けれど、実の親であるお二人の血を完璧に受け継いだ今の彼は、そしてそのご両親は、傷ついた私をどこまでも深い愛で包み込もうとしてくれている。
「ありがとう、父さん、母さん。かすみさんは、僕が一生をかけて幸せにするから」
隣でお粥の器を持って微笑む隼人さんの横顔を見つめながら、私はポケットの奥にある、外した古い指輪の存在を完全に忘れかけていた。
あやめの言いなりになって思い出を処分しているような惨めな拓人さんとは違う、本物の世界の支配者(CEO)の腕の中で、私の凍りついた心はゆっくりと溶かされていく。
――だが、この南条財閥の鉄壁の城の裏、生い茂る庭園の木々の影には、しばらく大学を休んでいるお嬢様を血眼になって探し出し、ついにここまで潜入してきた執事・長谷部誠の影があった。
メガネを外し、怒りで狂気に染まった誠は、南条隼人と寄り添うお嬢様をガラス越しに見つめ、静かに懐の鍵(監禁部屋の引き金)を握り直していたのだった――。
第63章:誠の深夜の寝室襲撃!?南条隼人の迎撃と、お嬢様争奪戦争編へ続く




