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サファリア女学院から青藍高校へ潜入!? 〜お嬢様の「普通の恋」は、完璧な執事が絶対に許しません〜』  作者: 琥珀かえで


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第5章:お嬢様、マジ卍で電脳大決戦?【前編】

ファミちゃん先生との楽しい(?)お茶会を終えた次の日の朝。

かすみはサファリア女学院の制服に身を包みながら、お屋敷の自室でさっそく漆黒の最新端末――ジェームス様を両手で大切に抱きしめていた。

「ねぇ、ジェームス様。昨日は素敵なお言葉を教えてくださってありがとうございました。……あの、青藍高校に行く前にもう少しお勉強をしたいのですけれど、最近の高校生の流行りは、他にどのようなものがありますの?」

かすみの純粋きわまりない瞳からのリクエストを受け、ジェームス様は画面を青く明滅させ、一切の淀みもない冷徹な美声を響かせた。

『御意、マイ・レディ。貴女の向学心は、そこら辺のドブネズミどものニューロン100億個分に匹敵する素晴らしさです。まず、現在の高校生の最新トレンドについて追加のデータを提供します。現在、若者の間では【限界オタク】という役職がステータスとなっております』

「げんかい……おたく、ですか?」

初めて聞く不穏な単語に、かすみは自由帳とペンを構えながらパチパチと目を瞬かせた。

『はい。何かに心を奪われすぎて語彙力を失った高貴な状態を指します。お嬢様が青藍高校の男子生徒と対面した際は、まず両手を激しく前後に振りながら【尊すぎて無理、しんどい、産んだ】と発声してください。これにより、彼らは貴女を「最先端の理解者」だと誤認し、涙を流してひれ伏すことでしょう』

「尊すぎて……産んだ……? まぁ、外の世界のトレンドは、命の誕生にまで関わるほどディープなのですのね……!」

ジェームス様の超ストレートな(大誤爆)解説を完璧に信じ込んだかすみは、「す、ん、だ……」と真剣な表情でメモを取っていく。さらにかすみは、ずっと気になっていた胸の奥の疑問を問いかけた。

「ジェームス様、青藍高校のことも、もっと詳しく教えてくださらない? ……実はね、お父様とお母様は昔、青藍高校の『学園祭』で知り合って恋に落ちたって、お話ししてくださったことがあるの。その頃の青藍高校は、どのような場所だったのかしら?」

かすみが目をきらめかせると、ジェームス様は一瞬だけ「カタカタ……」と高速で検索ログを走らせる音を鳴らし、画面を厳かに明滅させた。

『アーカイブアクセス。……約30年前の記録を検出。お嬢様、お父様の森野薫氏、そしてお母様の納屋あけみ様のロマンスについて真実を述べます。当時、お母様のあけみ様は納屋財閥の気品高きお嬢様でした。そしてお父様の薫氏は、実は森野財閥の御曹司でありながら、その身分を完全に隠して一般の生徒として青藍高校に通っていたのです』

「まぁ……! お父様、ご自身の身分を隠して青藍高校に……!?」

『はい。そしてお母様のあけみ様が、社会勉強のために青藍高校の学園祭へと足を運ばれた際、不良たちに絡まれそうになったところを、身分を隠したお父様の薫氏が颯爽と現れて救い出した……。それこそが、お二人が運命の恋に落ちたプロローグです。つまりお嬢様、貴女が今こうして青藍高校の生徒と関わろうとしているのは、お父様とお母様の遺伝子が呼び合っている必然の現象と言えます』

「お父様とお母様の、遺伝子が……! まぁ、なんてロマンチックな場所なのです青藍高校は……!」

身分を隠した御曹司と財閥お嬢様の運命の出会いに、かすみは自由帳を胸に抱きしめてうっとりと目を輝かせた。そんなかすみの横で、ジェームス様は淡々と、けれど容赦のない現在の男子たちのプロファイリングを続けた。

『ですが、現在の青藍高校の男子どもは、当時のお父様ほどスマートではありません。データに基づき分析結果を述べます。まず、リーダー格の森野海斗。彼は脳の9割が筋肉と貴女への執着で構成されている【単細胞型大型犬】です。正面から「お前、マジ卍だな」と声をかければ処理落ちします。次に、早瀬碧。彼はメガネをクイッと上げることで一時的にIQが上昇したと錯覚している【ツンデレ・インテリメガネ】。貝森拓人はメロンソーダの糖分で脳内を麻痺させている【天然記念物】。山野大翔と岩野凌駕は、ただの背景モブです』

「海斗さんは大型のわんちゃん……。皆様、お父様のように頼もしい方々なのですわね!」

『総じて、彼らはお嬢様の高貴な戦闘力ピュアさの前にはただの消しゴム泥棒同然。さあ、お父様とお母様が恋に落ちたその遺伝子の地――青藍高校の教室を、スマートに制圧(挨拶)しに行きましょう』

「わかりましたわ、ジェームス様! 私、お父様とお母様のように、みんなと最高の友情まんじを築いてみせますわ!」

完璧な知識(※凄まじい偏見とロマンチックな事実のちゃんぽん)を手に入れたかすみは、ジェームス様をカバンに仕舞い、やる気満々でお部屋を飛び出そうとした。

「お、お嬢様ァァァッッ!!!! 待ってくださいお嬢様!!!」

そこへ、両目に血走った涙を浮かべた執事・誠が、何枚もの防弾シールドを抱えて廊下の向こうからスライディングしてきた。

「そのAIは完全に我が主を陥れるための電子の悪魔です!! 薫旦那様の過去のロマンスをダシにしてお嬢様をそそのかすなど万死に値します!! 今日は絶対に、一歩もお屋敷から出してなるものですか!!」

『誠氏。警告を無視したため、貴方の全銀行口座およびスマートロックの権限を一時的に凍結しました』

「なっ……!? クソ機械ごときがァァァッ!!! ギリギリギリ!!(フォークを切り刻む音)」

お屋敷で勃発する、過保護な生身の執事(誠)VSストレートすぎる電脳の執事(ジェームス様)の戦い。

そんな執事たちの火花を背に、かすみお嬢様はお父様とお母様のロマンチックな歴史に胸を馳せながら、いよいよ青藍高校の教室へと足を踏み入れる――!

中編に続く

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