第4章:お嬢様、はじめてのしゃかいべんきょう?【後編】
『スーパールッツ』でのあまりに過酷(?)な社会勉強により、お魚コーナーで倒れかけてしまったかすみ。
連絡をうけて文字通り「光速」でお迎えに上がった執事・誠の高級車に揺られ、かすみは何とか無事にお屋敷へと帰還したのだった。
すっかり体調の戻ったかすみは数日後、先日の大騒動で迷惑をかけてしまった特別な家庭教師・ファミちゃん先生をお屋敷に招き、お礼とお詫びを兼ねた最高級のアフタヌーンティーをおもてなししていた。
白亜のテラスに並ぶ、色とりどりのマカロンやスコーン。かすみは丁寧にお茶を注ぐと、上品に微笑んだ。
「ファミちゃん先生、先日は私のせいでホールパーティーを中止にしてしまい、本当にご迷惑をおかけいたしました」
「なーに言ってるの! かすみちゃんの体が無事で本当によかったわ。それより、このお茶もスイーツも最高に美味しい!」
豪快にスコーンを頬張るファミちゃん先生を見て、かすみは嬉しそうに胸をなでおろすと、上品にスマートフォン型の漆黒の端末をテーブルの上に置いた。
「実は先生、あの日お屋敷に戻った後、お父様から素晴らしいプレゼントをいただいたのです。……最新の対話型AIの、ジェームス様ですわ!」
かすみが画面にそっと触れると、ホログラムの美しい光と共に、極めて冷徹で心地よい美声が響いた。
『――システム起動。ハロー、ファミちゃん先生。私は納屋かすみお嬢様の専属対話AI、ジェームス。先日はマイ・レディを適切にナビゲートできず、お買い物カートの速度配分を誤った貴女の運行管理能力には、重大な欠陥があると指摘せざるを得ません』
「な、何このAI、めちゃくちゃズバズバ言ってくるじゃない……!?」
初対面からストレートすぎるジェームス様の切れ味に、さしものファミちゃん先生も目を丸くする。しかし、かすみはすっかりジェームス様を虜にしており、潤んだ瞳で誇らしげに語った。
「ジェームス様はとっても優秀なのです。先日のスーパールッツのカットフルーツやお野菜の仕組み、そして……最近の高校生の流行りについても、何でも教えてくださいますの!」
「へぇ、流行り? 例えばどんなことを教えてもらったの?」
ファミちゃん先生が興味津々で尋ねると、かすみは自由帳を広げ、お上品にお口に手を当てて、満面の笑みでジェームス様の教えを披露した。
「はい! 青藍高校の皆様と仲良くなるためには、明日の朝、教室のドアを勢いよく蹴り開けて――【お前ら、マジ卍でエモすぎ。ウチとトモダチにならない奴、全員スクラップ工場行きだから】と、凄みを聞かせてご挨拶するのが最も確実な友情の契約だと教わりましたわ!」
「…………は!!?」
サファリア女学院の超絶箱入りお嬢様の口から飛び出した、絶対に出てはいけない最大級のヤンキーワード(&スクラップ工場の脅迫)。
ファミちゃん先生は飲んでいた高級紅茶を「ぶっっ!!」と豪快に吹き出し、激しく咳き込んだ。
「ご、ご挨拶……!? か、かすみちゃん、それ誰に使うつもり!?」
「もちろん、青藍高校の海斗さんや皆様の教室で、明日さっそく実践いたしますわ! 楽しみですわね、ジェームス様!」
『御意。お嬢様の可憐な声帯から発せられる「マジ卍」の破壊力は、青藍高校の不良たちの戦闘力を53万から0へと生体停止させるに足りる、最もスマートな戦術です』
「ちょっと待ちなさーーーーーいッ!!!!」
テラスの柱の陰から、怒髪天を衝く勢いで飛び出してきたのは、もちろん執事の誠だった。
「お嬢様! 騙されてはいけません!! そのAI、確信犯でバグっています!! お嬢様の高貴な唇からそのようなドブネズミの呪言を発させてなるものですか!! 明日の登校は、私が戦車でお止めいたします!」
『補足:誠氏。貴方の非科学的な妨害発言はノイズです。以後、発言は10文字以内に要約してください』
「機械ごときがこの私に……ッ!! ギリギリギリ(フォークを握りつぶす音)」
お嬢様を虜にしたストレートすぎる最新AI・ジェームス様のアドバイス(大誤爆)により、事態は明日、青藍高校の教室でさらなる大爆発を迎えることに。
何も知らない海斗くんたちの運命やいかに――!?
(第5章に続く)
第4章完結です!お読みいただきありがとうございました。
体調の戻ったかすみお嬢様による、ファミちゃん先生への素敵なおもてなしお茶会でした!
ですが、お父様からプレゼントされた森野財閥開発の最新AI「ジェームス様」の登場によって、物語はとんでもない方向へ……(笑)。
誠さんを「ノイズ」と一蹴するストレートさと、お嬢様に「マジ卍でスクラップ!」という謎のヤンキー挨拶を教え込む有能(?)っぷり、書いていて最高に楽しかったです!
次回、第5章では、この挨拶を引っ提げてかすみちゃんが青藍高校の教室に大乱入します!海斗くんたちのリアクションをぜひお楽しみに!




