第59章:スーパールッツ倒産!明かされる南条隼人との黒き縁談
「――昨日、大手スーパー『スーパールッツ』が、事実上の倒産に追い込まれました。経営権が如月財閥へと移行した直後の、あまりにも突然の破滅。これは貝森財閥の世代交代の失敗と、市場の冷酷さを物語る皮肉な結末と言えるでしょう……」
次の日の朝。
誠さんの部屋のテレビから流れてきたトップニュースの冷徹なアナウンスに、私は目の前が真っ暗になった。
私達の愛した、あのラグジュアリーなスーパールッツが、本当に倒産してしまったのだ。如月あやめの手によって、わざと値段を高くされ、あっという間に更地へと追いやられた城――。
しかし、ニュースはそれだけでは終わらなかった。
画面が切り替わると、そこにはフラッシュの光を浴びながら、勝ち誇った笑みを浮かべる如月あやめと、その隣でどこか操り人形のように不自然な笑みを浮かべる貝森拓人さんの姿があった。
『――なお、如月財閥は本日、貝森財閥の次期後継者・貝森拓人氏と如月あやめ令嬢の【正式な婚約】を同時に発表いたしました』
テレビの画面越しに、あやめは私を見せつけるように、拓人さんから贈られた大粒のダイヤの指輪が輝く薬指をカメラへと掲げてみせた。
(嘘でしょう……。ルッツが倒産したその瞬間に、私への当てつけのように婚約発表だなんて……)
私は、自分の左手の薬指から外した、あの寂しげな思い出の指輪をポケットの中で静かに握りしめ、ぽろぽろと涙を流した。
その時だった。手の中で、スマホが密かに、激しく震えた。
画面に表示されたのは――【拓人さん】。
私は弾かれたように通話ボタンを押し、耳に当てた。スピーカーから聞こえてきたのは、テレビの中の引きつった笑顔とはあまりにも違う、今にも泣き出しそうな拓人さんの掠れた声だった。
『かすみ、ごめん……! 本当は、僕はかすみと結婚して、二人でスーパールッツを盛り上げるつもりだったんだ……っ!』
「拓人、さん……? でも、あやめさんと婚約を……」
『如月あやめと婚約したのは、彼女の後ろ盾がすごいからなんだ……! ルッツが追い詰められて、僕はこうして如月財閥と政略結婚をするしかなかった……。でも、かすみ、愛している。嘘じゃないんだ!……もし、もしもすべてを投げ出してでも一緒になりたいなら、僕と一緒に逃げよう。すべてを捨てて、駆け落ちしてもいい……!』
「え……っ、駆け、落ち……?」
あまりにも身勝手で、けれど痛いほどの拓人さんからの愛の懺悔。実家を救うために心を殺して悪女の手を取ったという彼の哀れな真実に、私の心は激しく揺れ動いた。
けれど、あやめとの婚約発表のフラッシュは、冷酷にテレビの中で光り続けている。
私は、涙を拭うと、静かに受話器の向こうの最愛の人へ告げた。
「さよなら、拓人さん……。私達は、もう本当に、二度と会うことはないわ」
通話を切り、私は思い出の指輪をポケットの奥深くへ沈めた。
けれど、そんな傷心に浸る間もなく、私をお屋敷の広間で待っていたのは、私の実の両親 による冷酷な現実だった。
母親である納屋あけみ、そして父親の森野薫 の二人が、深刻な目を浮かべて愛娘である私を待ち受けていたのだ。
「かすみ、貝森拓人とは正式に別れなさい。如月と同時に婚約発表などという恥を晒し、実家を倒産させた男など、もう我が納屋家に何のメリットもありません」
母のあけみ が冷たく言い放つ。
「その代わり、お前には新しい縁談の話を進めておいたよ。我が納屋財閥を救い、スーパールッツを乗っ取った如月財閥を完全に叩き潰すための、最高のパートナーだ」
父の薫 が優雅に微笑みながら差し出してきた1枚の身上書。
そこに写っていたのは、シャープで端参な顔立ちに、どこかミステリアスで冷徹な瞳を輝かせた、あの超絶イケメンエリートの写真だった。
「……っ、この人は……南条隼人……!?」
そう、激安スーパー『マッツウィックス』の若き総帥として這い上がってきた、あの最強の復讐者だったのだ。
「マッツウィックスの勢いは今や本物。彼と結婚することこそが、我が納屋財閥が生き残る唯一の道なのです」
元カレからの悲痛な駆け落ちの誘い、実のご両親からの冷徹な宣告、そして南条隼人 とのまさかの【政略結婚】。
そのすべてを、広間の扉の影で、メガネを外したままバキバキに凍りついた瞳で聞いていた男がいた。
私の専属執事、長谷部誠。お嬢様のスマホの「駆け落ち」という密会音声まで完全に盗み聞きしていた誠の独占欲は、すでに限界を突破していた。
(お嬢様を……あのマッツウィックスの南条に渡すことも、貝森拓人と駆け落ちさせることも、この私が絶対に許しはしない……ッ!)
背後で誠さんの狂おしいほどのヤンデレな足音が響く中、私の運命は、さらなるドロ沼の深淵へと引きずり込まれていくのだった――。
第60章:南条隼人の直接プロポーズ!誠の決死の防衛監禁生活編へ続く




