第54章:女子大の修羅場!如月あやめの婚約マウントと、外された指輪
サファリア女子大の、緑豊かで広大なキャンパス。
誠さんの運転する車で登校し、一人で校舎を歩いていた私の前に、ついに恐れていた最悪の瞬間がやってきてしまった。
「ごきげんよう、かすみさん」
香水の甘い香りを漂わせ、私の行く手を阻むように立ちはだかったのは、サファリア女学院時代からのライバル、如月あやめ。
そして――その隣には、気まずそうに視線を泳がせている、私の最愛のフィアンセだったはずの貝森拓人さんの姿があった。
あやめは、ツンベルブリッツ大学で自分のものにした拓人さんの腕を これみよがしに強く抱きしめると、勝ち誇った邪悪な笑みを私に向けて言い放った。
「私達、来月婚約するの」
「え……っ?」
あまりの衝撃に言葉を失う私に、あやめはさらに追い打ちをかけるように、マウント全開の言葉を投げつけてくる。
「かすみさんも、毎朝送り迎えしてくれているあの過保護な長谷部誠っていう新しい彼氏がいると聞いたのよ? だから私達、これからは正式にお付き合いします。かすみさん、私達の結婚、心から応援してね?」
「あやめ、もうそのくらいに……」
拓人さんが小さな声で止めようとするけれど、彼はあやめの腕を振り払おうとはしなかった。その態度が、私への何よりの残酷な裏切りの証明だった。
あやめは私の絶望した顔を見て、心の中で「うふふ、これで貝森拓人は完全に私のものよ!」と激しい暗黒の勝利の笑い声をあげていた。
「それじゃあごきげんよう。さよなら、かすみさん」
二人は仲睦まじく、ツンベルブリッツ大の華やかな世界へと戻っていく。
遠ざかっていく二人の背中を見つめながら、私の目から、すうっと一筋の涙が頬を伝って落ちた。
けれど、私の心の中には、悲しみと共に、ある冷徹な『決意』が生まれていた。
「……さよなら、拓人さん。二度と、会わないから」
私は、震える右手で、左手の薬指にずっと輝いていた【拓人さんからもらった指輪】を、静かに、けれど迷いなく外した。
あんなに大切だった思い出の指輪をポケットにしまい、私は二度と彼を振り返らないことを誓った。
指輪を外した私の薬指は、ひどく冷たかった。
けれど、お屋敷に帰れば、メガネを外した誠さんが、鍵をかけた部屋で私を抱きしめるために待っている。
婚約指輪を自ら外した私を、誠さんの甘い籠が完全に包み込もうとしていた。
そして、この泥沼の裏で、マッツウィックスの若き総帥となった南条隼人の復讐の足音が、すぐそこまで迫っていることを、今の私はまだ知る由もなかった――。
第55章:誠の歓喜と、外された指輪の行方!南条隼人の宣戦布告編へ続く




