第51章:すれ違う恋、サファリア女子大の孤独と執事の誘惑
サファリア女学院を卒業してから、私達を取り巻く環境は大きく変わっていた。
私はエスカレーター式で、緑豊かで広大な校舎を誇る『サファリア女子大』へと進学した。毎日、専属秘書である長谷部誠の運転する車の後部座席に揺られ、何不自由のないお嬢様大生活を送っている。
けれど、私の心は少しも晴れなかった。
最愛の彼氏である貝森拓人さんは、誰もが憧れる共学の名門『ツンベルブリッツ大学』へと進学したのだ。
当然、そこは華やかな共学の世界。拓人さんの周りには、私以外の可愛い女の子たちがたくさんいるはずだった。
「かすみちゃん、ごめん。最近忙しくて」
ここ最近、電話をかけても、ラインを送っても、返ってくるのはその一言だけ。
あんなにいつも私の隣で爽やかに微笑んでくれていた拓人さんとの、あまりにも寂しすぎるすれ違いの日々。
「もしかして、拓人さんに他の彼女ができてしまったのかしら……」
そんな不安に押し潰されそうになった私は、放課後、お屋敷の私室のベッドの上で、お守りの自由帳をぎゅっと抱きしめて一人静かに引きこもっていた。
ポロポロと涙がこぼれ、シーツを濡らした、その時だった。
背後でカチャリ、と重々しい鍵の閉まる音が響いた。
驚いて振り返ると、そこにはいつもの過保護な笑顔を完全に消し去り、見たこともないほど冷徹で、そして熱い瞳をした誠が立っていた。
「ま……誠さん? どうして私の部屋に鍵を……?」
「お嬢様……。貝森拓人とすれ違い、そうして一人で涙を流すあなたを、私はこれ以上見ていられません」
誠はかけていたメガネを静かに外すと、机の上に置いた。その瞬間、彼のまとっていた過保護な空気が一変し、私を圧殺しそうなほどの「大人の男の独占欲」が室内に満ちていく。
「あっ……!」
部屋から逃げ出そうとした私の身体は、一瞬にして誠の逞しい腕によって引き戻された。背後から力強く抱きすくめられる――完璧な、そして容赦のないバックハグ。
私の背中に、誠の激しい鼓動と、狂おしいほどの熱い吐息がダイレクトに伝わってくる。
「誠さん、放してください……っ、私は拓人さんの彼女で……!」
「あんな男、お嬢様を放置して他の女とよろしくやっているやもしれぬ男です! マッツウィックスの南条隼人があなたを奪いに来ようとしている今、私以外の男にお嬢様を渡すわけにはいかないのです……ッ!」
誠は掠れた声でそう囁くと、私の身体を強引に自分の方へと向き直らせた。
驚きで見開かれた私の視界に、誠の美しい顔が急接近する。
「誠さ、ん――」
拒絶の言葉を紡ごうとした私の唇は、次の瞬間、誠の熱くて深い【唇へのキス】によって、完全に塞がれてしまった。
「ん……っ!?(ま……誠、さん……っ!?)」
頭が真っ白になり、抱きしめていた自由帳が床へとパラリと落ちる。
いつもの過保護な誠さんではない。拓人さんへの嫉妬と、私を誰にも渡したくないという激しい情念がこもった、大人の男のキスの味だった。
ようやく唇が離れたとき、誠は私の濡れた唇を長い指で優しくなぞりながら、どこか妖艶に、そして決意に満ちた声で言い放った。
「お嬢様。これからは私の籠の中で、私だけの至宝として愛されていただきます。ツンベルブリッツ大の拓人だろうと、マッツウィックスの南条だろうと、あなたの一髪すら触れさせはしません……」
拓人さんとの切ないすれ違い、そして、一番近くにいた誠さんのまさかのヤンデレ監禁キス――。
サファリア女子大に進学した私の前に待ち受ける【第2シリーズ】は、かつてないほどの激しいドロ沼愛憎劇の渦へと、私を巻き込んでいくのだった――。
第52章:ツンベルブリッツ大学の秘密!拓人の本当の"忙しさ"と、誠の看守生活編へ続く




