第49章:拡散された現実と、消えたなんちゃって御曹司
次の日の朝、青藍高校の2年A組の教室は、昨日をも遥かに凌ぐ爆笑とどよめきに包まれていた。
「おい見ろよこれ! クラスの共有LINEに上がってる写真、マジで大爆笑なんだけど!」
「『速報:元ツリンベッティーの御曹司(笑)の邸宅、ただの家だった件』だってよ! 薔薇の花束だの高級外車だの言ってたのに、普通の住宅街のめちゃくちゃ狭い家じゃん!」
昨日、特定班のチャラい2人と拓人、海斗が実地検証に行って撮影した「露村のリアルな住まい」の写真が、一晩のうちにクラス全員、いや、青藍高校全体のネットワークへ瞬く間に大拡散されてしまっていたのだ。
「なんちゃって御曹司どころか、ただの嘘つきストーカーじゃん」「見栄を張りすぎてて哀れすぎる」と、生徒たちの容赦ない嘲笑が教室中に響き渡る。
だが、その嘲笑を浴びるべき本人の席は、始業のチャイムが鳴っても、机の上がポツンと空いたままだった。
露村隼人は、学校に来るどころか、とうとう教室に姿を現さなくなってしまったのだ。
あんな激痛ストーカーポエム(露村かすみとしてお迎えする)を晒され、誇りだった母校を「生徒はいまいち」と一蹴され、最後の砦だった実家のプライドまで「ただの家」だと大暴露されては、あの傲慢だった隼人のメンタルも完全に粉砕され、引きこもって号泣するしかなかったのである。
その頃、住宅街の片隅にある「ただの家」の暗い自室で、隼人はトゲトゲの指輪をハメた手を血が出るほど握りしめ、ボロボロと涙を流しながら、壁の向こうの父親の部屋を睨みつけていた。
「……全ては、露村陣のせいだ……ッ!!」
父親が、40年前にサファリア女学院に通う納屋あけみ様に勝手に一目惚れして、存在すら知られていないのにストーカー大勘違いの怨念を募らせていたせいだ。
その歪んだ復讐のために自分をツリンベッティー学園で傲慢に育て、あけみ様の娘であるかすみお嬢様を強引に奪えなどという無茶な命令を下したせいだ。
そして、ジュエリー発表会でマダムたちに完全粉砕されて自爆し、財閥を倒産させたせいだ。
「親父が……親父があんな哀れなストーカーじゃなければ、俺様が青藍高校でこんな恥をさらして不登校になることもなかったんだァァーーッ!!」
引きこもった部屋で、父親への激しい憎悪の言葉を吐き散らしながら泣き叫ぶ隼人。
だが――それ以上に、彼の心の中で、どす黒い「本当の復讐の炎」がパチパチと音を立てて燃え広がっていた。
「……だが、これで終わりだと思うなよ。貝森拓人……! 俺の大切なかすみを奪った仕返しは、必ずしてやる。何年かかろうと、地獄の底から這い上がって、お前たちを徹底的に叩き潰してやるッ……!!」
隼人は、40年間空回りし続けた父親のダサい未練を切り捨て、自分の力で本当の怪物になることを誓うのだった。
この時、彼はまだ知らなかった。
この後、自分の「本当の親」が迎えにやってくるという、驚愕の運命(出生の秘密)が待ち受けていることを――。
第50章:衝撃の事実!暴かれる出生の秘密と、本当の親の襲来編へ続く




