第37章:ツリンベッティー学園祭の開幕と、異様な御曹司
露村陣と隼人から送りつけられた黄金の招待状を手に、私達を乗せた最高級リムジンの車列は、超格式高い(と露村家だけが思っている)名門校――『ツリンベッティー学園』の校門前に滑り込んだ。
車から降り立ったのは、お守りの自由帳をぎゅっと抱きしめた私と、隣で優しく手を引いてくれる本命彼氏の貝森拓人、そして「ちっ、相変わらず成金くせえ学校だな」と肩をすくめる森野海斗。
さらに、私達の後ろからは、納屋あけみお母様と森野薫お父様、そして世界最強のスーパールッツのトップである貝森孝雄パパとあずみママが、圧倒的なロイヤルオーラを放ちながら同行してきた。
学園祭で賑わうツリンベッティー学園の敷地に一歩足を踏み入れ、あずみお母様が上品に周囲を見渡す。
「まぁ、ここがツリンベッティー学園なんですの? ――ふふ、校舎と制服『は』立派ね」
あけみお母様も「本当ですわね、あずみさん。建物だけはよく手入れされているようですわ。おほほ」と微笑み合い、建物だけを褒めて中身を完全に格下扱いするラグジュアリーな会話を弾ませる。
その時、周囲のツリンベッティーの生徒たちが、私達のあまりの美しさとオーラに「な、何だあの超絶セレブな御一行様は……!?」とザワつき始めた。すると、人混みを割って、ニヤニヤと傲慢な笑みを浮かべた男がこちらへ歩いてくる。
「あらっ。噂をすれば、露村隼人ですわよ」
あけみお母様が扇子でツンと指し示した先には、自分たちが招待した神々の軍団を前に、完全に調子に乗っている露村隼人の姿があった。
しかし、彼の姿が視界に入った瞬間、私達の間に何とも言えない奇妙な沈黙が流れた。
「……あの、拓人さん。あの制服の着こなし……なんですの?」
私が思わず困惑して呟いてしまうほど、隼人の制服の着こなしは常軌を逸していた。
超名門校の立派な制服であるはずなのに、なぜかズボンを不自然に腰までずり下げ、シャツのボタンを無駄に全開にして胸元をアピールし、指には相変わらず凶悪なトゲトゲの指輪をこれでもかとハメて、ジャラジャラと安っぽいチェーンをぶら下げているのだ。格式高さを自慢したいはずなのに、本人の着こなしがマジ卍でダサすぎるのである。
「ぶっはははは! なんだよアレ! 格式高い学校の御曹司が、あんな腰パンでトゲトゲ指輪してんのかよ! ダサすぎてお腹痛い!」
海斗くんが特大の焼きたてパンを吹き出しそうになりながら大爆笑し、拓人くんも「……かすみちゃん、目を合わせちゃダメだよ。青藍高校にあんな奴がいなくて本当に良かった」と静かに私を庇う。
「フッ、よく来たな納屋かすみ! そして引き立て役の青藍高校の一般人どもめ! このツリンベッティー学園の圧倒的な格式高さと、俺様の完璧なスタイリッシュさに怯え……」
自分の着こなしが全校生徒と三大財閥のトップたちの前で凄まじい公開処刑になっているとも知らず、隼人はトゲトゲの指輪をキランと光らせてポーズを決めるのだった。とても情けないことに気付かずに――。
「おのれ露村隼人、我が至宝たるお嬢様の前にそんなツリンベッティーな腰パン大誤爆スタイルで現れ、網膜を汚そうとは……ッ! ギガ万死!! テラ万死ィィーーッ!!! 今すぐ私がそのズボンをさらにずり下げて、過保護な社会的抹殺を……ッ!!」
物陰で長谷部誠のメガネが怒りと困惑の真紅オーラでバキバキに大爆発する中、哀れな隼人の大爆笑ざまぁ劇が、ついに本格的な幕を開けるのだった。
第38章:泥沼のジュエリー発表会と、マダムたちの華麗なる逆襲へ続く




