第34章:反抗期の御曹司と、青藍高校の偶然
ピンポーーーン。
貝森財閥の重厚なインターホンが鳴り響き、リビングの扉が開かれると、そこに立っていたのは、少し気まずそうに髪をかき上げる、やんちゃな雰囲気をまとった少年――森野海斗だった。
相変わらず反抗期真っ盛りの彼は、日本最高峰の貝森財閥の豪華さに気圧されそうになりながらも、ツンとした態度を崩さない。
「……ちっす。森野海斗です」
そんな海斗を、あずみお母様はパッと華やかな、そしてどこまでも優しい笑顔でお迎えした。
「いらっしゃい、海斗くん! お待ちしてましたわよ。……あら? その制服、拓人と同じ青藍高校の生徒なのね! こんな偶然ってあるのねぇ!」
「えっ、お前、拓人の親の……あ、いや、はじめまして……」
あずみお母様のあまりにも温かい歓迎に、毒気を抜かれた海斗はタジタジになりながらも、同じ高校のバッジをつけた拓人くんを見て目を見開いた。
「よぉ、海斗。まさかお前がかすみちゃんの親戚だったなんてな。上がれよ、美味いパンがあるんだ」
拓人くんが爽やかに笑い、私の隣に座るように促す。私はお守りの自由帳をぎゅっと抱きしめながら、「海斗くん、来てくれてありがとうございます……っ!」と、かつてスーパールッツで助けてもらったお礼を込めて微笑んだ。
豪華なディナーテーブルに案内され、スーパールッツの焼きたてパンを口に運んだ海斗は、「……うまっ」と少し表情を緩ませる。そして、自分の叔父にあたる森野薫お父様の顔を見ると、ポツリポツリと胸の内を明かし始めた。
「……薫叔父さん。俺さ、相変わらずあの家(森野財閥)では、親父(凰牙)と大対立してんだよ」
「海斗……」
薫お父様が静かに甥の言葉を待つ。
海斗は悔しそうに拳を握りしめ、やんちゃな瞳を揺らした。
「周りは俺のことを『森野財閥の御曹司』としてしか見てねえし、親父は自分のレールを無理やり敷いて支配しようとしてくる。……だから俺、学校(青藍高校)では身分を隠して、わざとやんちゃばかりしてんだ。あんな冷苦しい財閥、俺は絶対に引き継がねえからな……っ!」
父親・凰牙への激しい反発と、御曹司という重すぎる宿命に苦しむ海斗の本音。
薫お父様は、そんな不器用な海斗の肩を優しくポンと叩いた。
「いいんだよ、海斗。君が自分の足で歩きたい道を、ゆっくり見つければいい。ここには君を縛る者なんて一人もいないからね」
「叔父さん……」
実の親からは貰えなかった温かい言葉に、海斗の尖っていた心が、少しずつ溶かされていく。
「おのれ海斗、お嬢様の隣の席に陣取るだけでなく、その母性(あずみ様)と父性(薫様)を独占して庇護欲をそそる高度なツンデレ作戦に出るとは……ッ! ギガ万死!! 私は騙されませんぞ、今すぐ過保護なバリケードでお嬢様から引き離さねば……ッ!」
部屋の隅で、長谷部誠のメガネがヤキモチのオーラでバキバキに真紅に大発光していたが、拓人くんが「誠さん、海斗にスープよそってあげて」とクールにいなすのだった。
温かい両親と本命彼氏、そして大切な親戚の海斗くん。
私を囲む世界は、かつての露村財閥の冷徹さとは真逆の、特大の愛に満ち溢れていた――。
第35章:動き出す露村包囲網!親たちの本気の更地化作戦編へ続く




