第29章:スーパールッツの思い出と、繋がる家族の絆
超巨大スーパー『スーパールッツ』の広大でピカピカな店内に足を踏み入れると、色とりどりの新鮮な食材と、胸が躍るような賑やかな活気に包まれた。
あずみお母様は楽しそうにショッピングカートを押し、私の顔を覗き込んで優しく微笑んだ。
「かすみちゃん、スーパールッツではどの食材が好きなのかしら?」
「ええっと……私、あの、お店の**『焼きたてのパン』**が大好きなんです……!」
胸元に「自由帳」をぎゅっと抱きしめながら恥ずかしそうに答えると、私の脳裏に、忘れられない大切な思い出が鮮やかによみがえってきた。
「実は私……昔、ファミちゃん先生と一緒に、社会勉強で初めてこのスーパールッツにやってきたんです。その時、お店の中にふわぁっと広がっていた、あの焼きたてのパンのすっごく良い香りに包まれて……。でも、初めて見る外の世界があまりにもキラキラしていて、ものすごく緊張しちゃって……その場で倒れてしまったんです。その時、倒れそうになった私を優しく抱きとめ、助けてくれたのが――森野海斗くんだったんです」
すると、横を歩いていた拓人くんが、少し誇らしそうな笑顔を浮かべて、孝雄お父様とあずみお母様に向かってあの時の様子を語り始めた。
「海斗はかすみちゃんが倒れた瞬間、自分のルッツのカートを放り出して、必死に彼女を抱きかかえて医務室まで運んだんだよ。ずっと手を握って『大丈夫だよ』って声をかけ続けてくれたんだ」
拓人くんの話を聞いていた貝森孝雄お父様とあずみお母様は、ふと何かに気づいたように顔を見合わせた。
「おや……確か、その森野海斗くんというのは、かすみちゃんのいとこ(ご親戚)にあたるのかしらね?」
あずみお母様がそう問いかけると、私の横でカートを押していた、お父様の森野薫が優しく微笑んで頷いた。
「ええ、そうなんです。私、森野薫の長男の息子が、あの森野海斗なんですよ」
「まぁ! そうだったのですか!」
あずみお母様はパッと表情を明るくすると、いたずらっぽく笑って拓人くんの肩を叩いた。
「それなら、拓人の恋のライバルにならなくて本当によかったわね! ふふふ、それほど素敵なご縁があるなら、かすみちゃん、今度はその森野海斗くんも一緒に、貝森財閥のお屋敷へ遊びに連れてきなさいね」
「あはは、それいいですね! ぜひ海斗も呼びましょう!」
拓人くんが嬉しそうに「いいですね」と快諾し、両家の絆が血縁を越えてさらに深く、温かく結ばれていく。
「おのれ海斗め、恋のライバルでなくとも、お嬢様の唇(頬)や手を脅かす親族の不届き千万な害虫(?)であることには変わりありません……! 今度お屋敷に来た日には、私がみっちりと過保護なおもてなし(説教)を……!」
背後からカートに隠れて尾行していた執事の長谷部誠が、店の隅でメガネをバキバキに発光させて嫉妬の炎を燃やしているが、私達はそれを楽しく笑い飛ばした。
大大好きな焼きたてのパンやたくさんの食材をカートに詰め込み、私達は幸せに満ちた気持ちのまま、お祝いパーティーが待つ貝森財閥の邸宅へと車を走らせるのだった――。




