第23章:暴走執事のお説教会議と揺るがぬ過保護
日本中を大混乱に陥れた露村財閥の定例記者会見場をあとにし、私達は納屋財閥の広大な邸宅へと帰ってきた。
リビングの重厚なソファに座るあけみお母様と薫お父様は、正面に直立不動で控える執事の長谷部誠を、ジロリと厳しい目で見据えている。私はその少し後ろで、お守りの「自由帳」をぎゅっと抱きしめながら、ハラハラした心地で3人の様子を見守っていた。
「――誠。あなた、あの記者会見での発言は一体なんですの?」
あけみお母様が、扇子をトントンと机に叩きつけながら問い詰める。
「いくらかすみちゃんを守るためのどさくさだったとはいえ、日本中のテレビカメラの前で堂々と『私と結婚してください』だなんて……! 執事としての立場を完全に忘れて暴走するなんて、ちょっと看過できませんわよ?」
薫お父様も、腕を組んで深くため息をついた。
「そうだぞ、誠。露村の大嘘を暴くところまでは100点満点だったが、その後にどさくさ紛れに自分の本心を電波ジャックして告白するとは、我が納屋財閥の執事としていささか行儀が悪すぎるのではないか?」
ご両親からの至極まっとうなお説教。
さすがの暴走執事も今度ばかりは反省するかと思いきや、誠はフッと冷徹に微笑むと、指先でキランとメガネのブリッジを上げた。その奥の瞳は、少しも悪びれることなくバキバキに真紅の発光を放っている。
「あけみ様、薫様。お言葉ですが、私は一瞬の隙も無駄にしない完璧な執事。あのどさくさこそ、我がかすみお嬢様に群がる露村のクズや、青藍高校の貝森拓人という不届き千万な害虫どもをまとめて牽制する、最高のタイミングだったのです。お嬢様を私の過保護な檻で一生お守りするためなら、私はいつでも日本中の電波をジャックする覚悟がございます」
「これっぽっちも反省してませんわね、この過保護執事は……!」
あけみお母様が呆れたように額を押さえる。
「それに……」
誠は急に声を低くすると、メガネの奥の瞳をいっそう不穏にギラつかせ、後ろにいる私の方をじっと見つめてきた。
「あの青藍高校の貝森拓人……カメラの前でお嬢様の頬にどさくさ紛れの接吻をキメるなど、万死を通り越してテラ万死。我が支配の届かぬ場所でお嬢様にあそこまで急接近していたとは、執事として、そして一人の男として断じて看過できません。お嬢様、今夜はみっちりと、私の部屋で過保護なお仕置き(家庭訪問)が必要なようですね……」
誠の凄まじい嫉妬のオーラがリビング中に満ちていく。
そのヤキモチの激しさに、お父様とお母様も「やれやれ」と苦笑いするしかなかった。
けれど、この時の私達はまだ知らなかった。
会見場で堂々と「本命彼氏」を宣言したあの貝森拓人が、この後すぐ、さらなる特大の嵐を引っ提げてこの納屋財閥へ直々に乗り込んでくることを――!




