第395章:魔王の咆哮、閉ざされた幼い心
夜の街を、早瀬碧は一台の車で彷徨っていた。
サイドシートに残された、あの日、雨の中で脱ぎ捨てられたかすみの片方の靴。その小さな白い靴を握りしめ、彼は血走った瞳で街の灯り一つ一つを睨みつけていた。
「どこにいるんだ、かすみ……!!」
彼がかつて指揮したどんな巨大プロジェクトよりも、どんな敵との抗争よりも、この「かすみ探し」は困難を極めていた。南将暉の気配を追っても、巧妙に攪乱され、手掛かりは霧散する。かすみという存在が、碧の人生から物理的に消し去られようとしている恐怖が、魔王の心臓を物理的に締め付けていた。
捜索の手がかりを求めて、碧は貝森邸へと向かった。
そこには、あやめに預けられた凛と蓮がいた。二人はソファの端で小さく丸まり、まるで遠い異国の住人のように、碧の訪れを冷たい目で見つめていた。
「凛、蓮……」
碧が恐る恐る声をかけ、優しくその肩に手を伸ばした瞬間だった。
凛がビクリと震え、あからさまに碧の手を振り払った。その瞳には、かつてパパに向けていた無邪気な信頼はなく、底冷えするような拒絶が宿っていた。
「……触らないで」
「え……?」
碧の鼓動が止まる。蓮もまた、潤んだ瞳で碧を真っ直ぐに見つめ、堰を切ったように本心を吐き出した。
「パパのせいだよね。ママを追い出したの、パパでしょ……? 私たち、パパとママが一緒にいないお家なんて、もうどうでもいいよ」
「そんな……パパは、かすみを探して――」
「パパもママも、大嫌い!」
蓮のその叫びは、まるで鋭利な刃物となって碧の胸を貫いた。
「私たちはね、パパとママがケンカするのを見るために生まれてきたんじゃないよ! 私たちのことなんて、二人とも本当は邪魔なんでしょ!?」
「凛、蓮、違うんだ……っ!」
碧がどんなに必死に弁解しようとしても、子供たちの心はすでに閉ざされ、壁のように高く聳え立っていた。
自分がいかに愚かな嫉妬に狂い、かすみを追い詰め、子供たちを傷つけたか。その代償として支払うべきは、最愛のかすみちゃんの行方だけではなく、我が子たちからの「親としての信頼」という、取り返しのつかない宝物だったのだ。
碧は膝から崩れ落ちるようにその場に立ち尽くした。
南条将暉に支配されたかすみ、そして心を閉ざした凛と蓮。魔王はついに、世界で最も大切なもの全てを失い、ただ一人、深い深い闇のなかで凍りついていた。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




