第392章:雨の彷徨、引き裂かれる子供たちの願い
ザーザーと容赦なく降り注ぐ春の雨。
かすみは貝森財閥の広大な敷地を飛び出し、あてもなく夜の街を歩いていた。傘もなく、裸足のまま濡れたアスファルトを踏みしめる感覚さえ、今の彼女には遠い。
冷たい雨が白いドレスを容赦なく濡らし、体温を奪っていく。けれど、それ以上に彼女の心を凍らせていたのは、「私はもう、碧さんの妻でいられない」という絶望的な確信だった。大好きな人の理性を狂わせ、苦しめてしまう存在なら、いっそこのまま雨の中に溶けて消えてしまいたかった。
――その頃、温かい光に包まれているはずの貝森邸の応接室では、もう一つの絶望が満ちていた。
頭を冷やしに戻ってきたはずの早瀬碧は、かすみが履物を残したまま雨の中へ失踪したという報せを聞いても、すぐに動き出すことができなかった。彼の脳裏には、まだあのかすみの甘えた声が、鋭い刃となって突き刺さったままだ。
「碧……! かすみさんが一人で雨の中に飛び出していったのよ!? 今すぐ追いかけなさい!」
あやめが詰め寄るが、碧はゆっくりと首を振った。その瞳は、完全に光を失っていた。
「……いや。追っても同じだ。今の俺の心は、あいつを直視すればするほど狂ってしまう。……拓人、あやめ。すまないが、やはり俺は……かすみとは無理だよ」
その冷徹で、あまりにも悲しい諦めの言葉が部屋に響いた、その時だった。
「――嘘……でしょ……?」
ガタタンッ、と応接室のドアが小さく開き、そこには顔を真っ青に染めた凛と蓮が立ち尽くしていた。パーティーの途中で、パパとママの様子が気になって様子を見に来た二人は、最愛の父親の口から放たれた最悪の決定を、その耳でしっかりと聴いてしまったのだ。
「パパ……今、なんて言ったの? ママとは無理って……離婚するってこと……?」
蓮の目に、みるみるうちに大粒の涙が溜まっていく。
「嫌だよ……そんなの絶対に嫌だ!!」
凛が碧の元へ駆け寄り、その高級スーツの裾を力一杯に掴んで激しく泣き崩れた。
「パパとママは、一緒じゃなきゃ嫌だ……っ! 二人で一緒に、私と蓮の横にいてくれなきゃ絶対に嫌だよ!! お願いだからママを探して! ママを一人にしないで……っ!!」
蓮も凛の隣で激しく泣きじゃくりながら、父親の冷たい決断を拒絶するように叫び続けた。
我が子の張り裂けんばかりの号泣と、「一緒じゃなきゃ嫌だ」という切実な願い。その声は、嫉妬に狂っていた魔王・早瀬碧の凍りついた心に、激しい亀裂を入れるように響き渡るのだった。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




