第388章:受け継がれる輝き、二人だけの対話
サファリア女学院中等部の豪奢な校門前。
ロールスロイスから降り立った早瀬碧とかすみが揃っている姿を見た瞬間、待っていた凛は「パパ! ママ!」と叫んで、かすみの胸へと飛び込んできた。
「凛……心配させてごめんなさいね。蓮の入学式、ちゃんとパパと一緒に見届けたわよ」
かすみが優しく抱きしめると、凛はパパを見上げ、碧が静かに頷くのを見て、今朝の不安が嘘のようにパッと大粒の笑顔を咲かせた。隣では百合も、湊の晴れ姿を見て嬉しそうに微笑んでいる。
一行を乗せた車は、そのまま薔薇が咲き誇る貝森財閥の本邸へと向かった。
大広間に用意されたのは、子供たちの新たな門出を祝うための、目も眩むような豪華なご馳走の数々。家出の緊迫感から一転、温かい光に包まれた「合同入学お祝いパーティー」が華やかに幕を開けた。
乾杯の音頭が終わり、会場が賑やかな笑い声に包まれた頃、あやめが大きなリボンがかかった箱をいくつも抱えて、子供たちの前に進み出た。
「さあさあ、主役の皆さん、注目してちょうだい! 蓮くんと湊くん、青藍高校付属中学入学本当におめでとう! これはあやめさんからの入学プレゼントです!」
あやめから手渡されたのは、青藍の制服にぴったりな、英国製の最高級万年筆だった。蓮と湊は「わあ、かっこいい!」「あやめ叔母さん、ありがとう!」と目を輝かせて大喜びする。
「そしてね、女の子たちにもちゃんとプレゼントがありますよ」
あやめは少し悪戯っぽく、しかしどこか懐かしむような優しい瞳で、凛と百合の前に小さな天鵞絨の箱を差し出した。
「凛ちゃん、百合ちゃん。これはね、私がサファリア女学院中等部に入学した時に、私のお母様からもらったのと同じものをあげますね。サファリアの伝統のブローチよ。これをお守りにして、素敵なレディになってね」
箱が開かれると、中からはサファリアの校章をあしらった、気品あるエメラルドの輝きが顔を出した。凛と百合は「お母様と同じもの……っ!」「すごく綺麗……!」と、その重みと愛の深さに感極まって微笑み合う。
子供たちがプレゼントに夢中になり、拓人がそれを優しく見守るなか、あやめはスッと表情を真剣なものに変え、壁際でまだ互いに視線を合わせられずにいた碧とかすみの元へと歩み寄った。
あやめは二人の背中をパシッと力強く叩き、二人を応接室のドアの前へと押し出す。
「さあ、子供たちの笑顔も見られたことだし、ここからは大人の時間よ。かすみさんと碧さんは、あのお部屋でゆっくりお話して下さいね」
「あやめさん……」
かすみが戸惑う声を出すが、あやめはそれを許さない。今度は真面目な顔で、碧の深い漆黒の瞳を真っ直ぐに見据えた。
「碧さん、男ならシャキッとしなさい! かすみさんも! ……お互いの気持ち、ちゃんとぶつけ合って、伝えなさいよ。これ以上すれ違ったら、私が承知しないんだからね!」
あやめの愛の叱咤に、碧は観念したようにふっと苦笑し、「……感謝する、あやめ」と低く呟いた。
重厚な応接室のドアが静かに閉まり、賑やかなパーティーの音が遠のく。
別荘での事件以来、初めて訪れた、二人きりの静寂。まだ胸に嫉妬の傷を抱える魔王・早瀬碧と、彼の愛を取り戻すために命を懸けた妻・かすみ。二人の真実の心が通い合うための、運命の話し合いが、ついに静かに始まったのだった。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




