第383章:嘲笑う来賓、受付のチェックリスト
厳かなパイプオルガンの音が響き渡る、青藍高校付属中学校の格式高い講堂。
春の温かな光がステンドグラスを通じて差し込むなか、来賓席の最前列には、仕立ての良いスリーピーススーツを完璧に着こなした南条隼人――南将暉が、優雅に脚を組んで座っていた。
その端正に整形された顔には、次期理事長候補としての品格ある微笑が湛えられているが、その瞳の奥にあるのは、ドス黒い愉悦だけだった。
(さてと……早瀬碧とかすみが、揃ってこの入学式に出席するかな?)
隼人は心の中で低くあざ笑う。
夫婦揃って出席しなければ入学取り消しという学校側の鉄の掟。別荘でかすみに自分への愛を囁かせ、キスの音まで受話器越しに聴かせてやったのだ。あの独占欲の塊である早瀬碧のプライドは、今頃跡形もなく消し飛んで引きこもっているに違いない。
(息子の晴れ舞台を、親の醜い愛憎劇で台無しにする……。いいね、最高だよ、碧。お前が絶望する姿を想像するだけで、極上の美酒を飲んでいる気分だ)
「南代表、そろそろ受付も始まっておりますが、お席の居心地はいかがですか?」
学校の関係者が、揉み手で隼人に媚びを売るように話しかけてきた。
「ああ、素晴らしいよ。……そうだ、少し退屈しのぎに、今日の入学式の出席者リストを拝見させてもらってもいいかい?」
「は、はい! もちろんでございます。こちらになります」
手渡されたタブレットの画面を、隼人は細い指先でスクロールしていく。新入生とその保護者の受付状況がリアルタイムで反映されるチェックリスト。
「どれどれ……」
隼人の視線が『早瀬蓮』の欄で止まる。そこには、保護者の到着を示すチェックマークはまだ一つもついていなかった。
「ふっ……まだ来てないよ。へぇ、面白いね」
隼人は口元を歪め、さらにリストを下にスライドさせた。するとそこには、すでに『出席』の青いマークが灯っている名前があった。
「貝森財閥は……夫婦揃って出席してる、か」
拓人とあやめは、親友の息子の晴れ舞台を祝うため、そして早瀬家の異変を察してすでに会場に陣取っているのだ。だが、主役であるはずの早瀬碧とかすみの姿はどこにもない。子供の失踪にパニックになっているかすみと、嫉妬で引きこもっている碧が、ここに来られるはずがないのだから。
隼人はタブレットを関係者に返すと、背もたれに深く寄りかかり、天を仰いで残酷に呟いた。
「まぁ……自分の哀れな境遇と、無能な父親を恨むんだね。早瀬蓮くん。お前の未来は、今日ここで、俺の手によって完全に閉ざされるのさ」
新入生たちの華やかな歓声が響く受付ロビーの裏で、悪魔のカウントダウンは着実に進んでおり、蓮の晴れ舞台は今、最大の危機を迎えようとしていた。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




