第381章:友の叱咤、愛の強制召集
「――かすみさん!? 落ち着いて聞いて、私あやめです!」
早瀬邸のリビングで、絶望に震えながらスマートフォンを握りしめていたかすみの耳に、救世主のような親友の声が飛び込んできた。
「あやめさん……っ! どうしよう、凛と蓮が、朝からいなくて……っ!」
「大丈夫よ、かすみさん。凛と蓮くんは今、うち(貝森財閥)に来てるわ。二人とも大粒の涙を流して、ボロボロになりながら湊と百合の元に駆け込んできたの。だから安心して」
「え……? 貝森家に……?」
我が子の無事を知った瞬間、かすみは腰から崩れ落ちるように床へへたり込み、堰を切ったように涙を流した。生きた心地のしなかった暗闇に、ようやく一筋の光が差し込んだ瞬間だった。
しかし、受話器の向こうのあやめの声は、安堵の直後、いつになく真剣で、そして強い響きを帯びた。
「でもね、かすみさん。今日、青藍高校付属中学校の入学式でしょ? せっかく蓮くんが血の滲むような努力をして掴み取った晴れ舞台が、このままじゃ台無しよ。蓮くん、制服も着ずに泣いているの。今日はあの子の人生の、一度きりの晴れ舞台なのよ?」
「あやめさん……。でも、私と碧さんは、今……」
「言い訳は聞かないわ」
あやめはかすみの言葉を遮るように、あえて冷徹な、しかし親友を想う一世一代の『嘘の脅し』を突きつけた。
「今すぐ早瀬碧さんに連絡しなさい。いい? 夫婦揃って入学式に出席しないなら、青藍の理事会に手を回して、蓮くんの入学を本当に取り消しにさせちゃうからね!」
「えっ……!? 入学、取り消し……っ!?」
「そうよ! どんな事情があるか知らないけれど、親の喧嘩に子供の未来を巻き込むんじゃないわよ! パパとママが揃って笑顔で蓮くんの横に立たないなら、貝森財閥の総力を挙げてでも式を始めさせないんだから! だから這ってでも、碧さんを引っ張ってきなさい!」
ブツリ、と一方的に通話が切れた。
かすみはスマートフォンを握りしめたまま、あやめの言葉の裏にある「早く碧さんと仲直りして、子供を安心させてあげて」という不器用なほどの深い愛に気づき、ハッと目を見開いた。
泣いている暇はない。蓮の未来のために、そしてバラバラになりかけた家族をもう一度繋ぎ止めるために。かすみは涙を拭うと、再び、あの愛する夫の番号へと指を動かすのだった。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




