第378章:拒絶の残響、失踪の入学式
かすみは碧の背中にしがみつき、涙ながらに子供たちの名前を叫んだ。これで碧の心は戻る、戻ってくれるはずだと信じていた。
しかし――碧の大きな手が、かすみの震える両手にそっと触れ、そして、冷酷なほど静かに、その指を一本ずつほどいていった。
「碧……さん……?」
かすみが愕然と声を漏らすなか、碧はゆっくりと振り返った。その顔は、かつてないほどやつれ、深い苦悩に満ちていた。魔王と呼ばれた男のプライドも理性も、完全に擦り切れてしまっていた。
「……かすみ、ごめん。頭では理解していても、今の俺にはどうしても、あの声を、あの光景を受け入れることができないんだ。少し……頭を整理したい。だから、少しの間、離れ離れになろう」
「そんな……嫌よ! 離れるなんて嫌っ!」
「凛と蓮には……このことは知らないほうがいい。俺から上手く伝えておく」
碧はそれ以上かすみの言葉を聞こうとせず、夜の闇の中へと車を走らせ、そのまま去って行ってしまった。別荘に残されたかすみは、崩れ落ちて泣き叫ぶしかなかった。
それから、地獄のような沈黙の日々が流れた。
碧からは一本の電話も、一通のメッセージすら届かない。かすみはただ、自分が犯してしまった「演技という名の代償」の重さに押しつぶされそうになりながら、孤独な日々を耐え忍んでいた。
そして――何の連絡もないまま、ついに蓮と湊の憧れだった、青藍高校付属中学校の入学式の朝がやってきた。
かすみは重い心を引きずりながら、子供たちの晴れ姿を準備するために早朝から早瀬邸のリビングへと向かった。碧が裏から手を回して守り切った、子供たちの輝かしい未来の第一歩。せめて今日だけは、母親として笑顔で送り出さなければならない。
「凛、蓮、起きなさい。入学式の準備を――」
しかし、子供たちの部屋の扉を開けたかすみは、その場で息を呑んだ。
ベッドの上は綺麗に整えられており、そこには誰もいなかった。いつもならリビングで朝食を待っているはずの凛の姿もない。
「凛? 蓮? どこにいるの……?」
家の中をどれだけ探しても、二人の気配はどこにもなかった。クローゼットを開けると、今日着ていくはずだった青藍の制服だけが、ぽつんとハンガーに残されている。
朝から、凛と蓮がいない。
碧との連絡が途絶え、夫婦の絆が引き裂かれたこの最悪のタイミングで、最愛の子供たちまでが忽然と姿を消してしまったのだ。外は抜けるような青空なのに、早瀬邸にはかつてない暗雲が立ち込め、かすみの心は完全なるパニックへと突き落とされるのだった。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




