第379章:不在のセレモニー、絶望の呼び出し
青藍高校付属中学校の入学式当日。
窓の外には、新しい門出を祝うような眩しい春の青空が広がっているというのに、早瀬邸の中はまるで時間が凍りついたかのように冷たく静まり返っていた。
「蓮……? 嘘でしょ……」
かすみは震える手で、もう一度息子の部屋のドアを開けた。しかし、いくら目を凝らしても、ベッドにもデスクの前にも、愛しい我が子の姿はない。
クローゼットの前にぽつんと掛けられた、青藍高校付属中学の真新しい制服。昨日まで蓮が「早く着たいな」と目を輝かせて眺めていたはずのその制服だけが、主を失った抜け殻のように静かにハンガーにかかっているだけだった。それが余計にかすみの恐怖を駆り立てる。
「凛……! 凛もいないの……!?」
背筋に冷たい汗を流しながら、かすみは隣の凛の部屋へと飛び込んだ。だが、そこもまたカーテンが虚しく揺れているだけで、凛の気配は完全に消え去っていた。
頭の中が真っ白になる。南条隼人が離婚不成立の腹いせに子供たちを攫ったのか、それとも子供たちが自分たちの意志でどこかへ行ってしまったのか。
極限のパニックのなかで、かすみが握りしめたのはスマートフォンだった。
『少し離れ離れになろう』
そう言い残して去っていった夫。あれ以来、拒絶されるのが怖くて、絆が壊れるのが怖くて、どうしてもかけることができなかったあの番号。だが、子供たちの失踪という非常事態を前にして、かすみに迷っている暇など一秒もなかった。
コール音が鳴り響く。心臓が破裂しそうなほどの数秒の後、カチャリと受話器が繋がった。
「――碧さん……っ!!」
かすみは溢れ出す涙も拭わず、受話器の向こうにいるはずの夫に向けて、狂ったように叫んだ。
「碧さん、どうしよう……っ! 凛と蓮がいなくなっちゃったの……!! 朝起きたら、どこにもいなくて……蓮の部屋には青藍の制服がかかっていただけだったのよ……っ!! ねぇ碧さん、あなたのところに、子供たちから何か連絡はなかったの……!?」
声が震え、過呼吸のように息が詰まる。
最愛の子供たちの失踪。そして、冷戦状態だった夫への悲痛なSOS。
受話器の向こう、早瀬ホールのCEO室にいるであろう魔王・早瀬碧は、この最悪の報せを聞いて一体どんな反応を示すのか。静まり返る回線の向こうから、冷徹な緊張感がじわじわと伝わってくるのだった。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




