第373章:崩れ去る全能感、魔王の完全包囲
「――代表、失礼します! 緊急の報告が……っ!」
翌朝、南コンチェルの最高経営責任者室。
かすみを連れて本社へ移動する直前、隼人の元へ裏工作部隊のリーダーが血相を変えて飛び込んできた。その手は、手渡そうとするタブレットごと激しく震えている。
「どうした。早瀬碧の離婚手続きは無事に受理されているんだろうな?」
隼人は革椅子に深く腰掛け、勝利者の余裕を浮かべて尋ねた。
しかし、部下から返ってきたのは、隼人の世界のすべてをひっくり返すような、最悪の事実だった。
「い、いいえ……! 早瀬碧は離婚していません! 提出された離婚届は、名前も筆跡もすべて精巧に作られた『偽物』です! 戸籍上、二人は今も完全に夫婦のままです……!」
「な……んだと……っ!?」
隼人の顔から、一瞬にして血の気が引いていく。
「それだけではありません……! 昨夜、代表が選考不備で不合格にしたはずの早瀬蓮と貝森湊ですが……すでに青藍高校付属中学への入学手続きを、すべて裏から完了させています!」
「馬鹿なッ! 次期理事長はこの俺だぞ!? 学校側が俺の指示を無視して手続きなどできるはずが――」
「それが……二人の父親も、あの学校の卒業生だそうです! 卒業生組織の最上層部と、早瀬・貝森の両財閥が裏から一斉に理事会へ圧力をかけ、代表が正式に就任する前に、特例措置として入学の手続きを全て『既事実』として成立させてしまいました……!」
ガタァァァン!!!
「おのれ……早瀬碧ァァァッッ!!!??」
隼人はデスクの上の高級な調度品をすべて床へと叩きつけ、獣のような咆哮を上げた。
子供の未来を人質に取り、かすみを奪い、完璧な勝利を手にしたはずだった。しかし、早瀬碧は最初から隼人の要求など一ミリも呑んでいなかったのだ。離婚したフリをして隼人を油断させ、その隙に「父親の出身校」という絶対に侵せない聖域のコネクションを使って、子供たちの未来を完璧に防衛してみせた。
完全に踊らされていたのは、自分の方だったのだ。
激昂し、頭の血管がはち切れんばかりに顔を真っ赤に染めた隼人は、震える手でスマートフォンを掴み、早瀬碧の直通番号へと怒りの電令を叩きつけた。
「……早瀬碧ィィッ! 貴様、俺を騙したな……っ! 離婚もせず、子供の入学も裏から手を回し、よくも俺のプライドを踏みにじってくれたな……!!」
受話器の向こう。静まり返る早瀬ホールのCEO室から聞こえてきたのは、南条隼人の狂態をあざ笑うかのような、氷点下の冷酷なる魔王の低い声だった。
『――ようやく気づいたか、南条隼人』
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




