第371章:捨てられる恐怖、歪んだ約束
「ねぇ……隼人。私も他の人みたいに、いつか捨てたりするの?」
かすみは瞳に薄っすらと涙を溜め、縋るように隼人の胸元を見つめた。その声には、本物の恐怖と、彼に見捨てられることへの怯えが滲んでいる――ように、隼人には聞こえた。
隼人はかすみの顎を優しく撫で、憐れむような、しかしどこか満足げな笑みを浮かべた。
「ふっ、相変わらずネガティブだな、かすみ。……いいか、よく聞け。俺は人を愛せない。あんなもの、弱者が依存し合うためのただの枷だ。だからこそ、俺は過去の女たちを捨ててきた」
隼人は窓の外の闇を眺め、冷酷に言葉を継ぐ。
「だが、お前は違う。お前は俺の人生に彩りを与えた、唯一の最高傑作だ。俺が自分自身を愛しているのと同じように、お前を所有し続ける。壊れるまで、飽きるまで……いや、飽きることなどないだろう。俺は自分の分身を捨てるような真似はしない」
(分身……。この男、本気で私を自分の一部だと思い込んでいる……!)
かすみは心の中で戦慄した。この男にとって、自分は愛する人間ではなく、ただの鏡に過ぎない。自分自身の虚栄心を映し出し、所有欲を満たし続けるための、都合のいい「人形」。
「安心していい。お前は俺の腕の中で、永遠に俺だけの『南条かすみ』として生きるんだ。誰も、何人も、俺たちを引き裂くことなんてできやしない」
隼人はそう言って、かすみを背後から強く抱きしめた。
彼の自信に満ちた声、勝利を確信したような落ち着き。かすみは彼の胸に顔を埋めながら、心の中で激しく鼓動を打つ碧の存在を感じていた。
(ごめんなさい、隼人。あなたのその『絶対の自信』こそが、あなたの首を絞めるのよ……)
その時だった。
別荘の敷地外の森の奥から、微かな、しかし間違いのない「重低音」が響き渡った。かすみだけが気づいた、碧の強襲の合図。
かすみは隼人の腕の中で、誰にも見えないように口元を歪めた。
「ねぇ、隼人。愛してるわ。ずっと、こうして抱きしめていてね」
隼人は「ああ、当然だ」と、かすみの首元に深く顔を埋める。
男が獲物を愛おしんでいるその瞬間こそ、魔王・早瀬碧が、もっとも恐ろしい牙を剥くための絶好の開幕ベルだった。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




