第366章:悪魔の天秤、監禁の別荘
ラグジュアリーなホテルの密室から、南コンチェルが所有する人跡未踏の森の奥深くに佇む秘密の別荘へ――。
かすみは完全に自由を奪われ、漆黒の寝室のベッドに横たえられていた。目の前に立つのは、かつての姿を捨て、南将暉という偽りの名で再び彼女の前に現れた男、南条隼人だった。
「さぁ、ようやく邪魔者のいない俺たちの城に着いたよ。かわいい我が妻、南条かすみ。……もう一度、俺と結婚しよう」
隼人はうっとりとした瞳でかすみの頬を撫でる。かすみは涙を流しながら「私は碧さんの妻よ……! あなたなんかと結婚なんて絶対にしない!」と激しく拒絶するが、隼人はただ冷酷に笑うだけだった。
「いや、お前は俺の元に戻るんだ。……そのために、すでに早瀬碧には連絡を入れてある」
「え……? 碧さんに、何を……っ!?」
かすみが怯えに顔を歪めるなか、時を同じくして、早瀬ホールのCEO室にいる碧のスマートフォンには、隼人からの冷徹なメッセージと動画が届いていた。
『早瀬碧、かすみは返してもらうよ。これからは俺の妻、南条かすみとしてここで一生生活してもらうからね。……ああ、そうだ。お前に一つ、素晴らしい取引を持ちかけてあげよう』
碧が画面を睨みつけるなか、隼人の声はさらに歪んだ愉悦を帯びていく。
『早瀬蓮と、貝森湊の、青藍高校付属中学への入学許可を出してあげてもいい。……ただし、かすみと今すぐ離婚することが条件だ。さぁ、父親として子供の輝かしい未来をとるか、男として愛する妻をとるか……どちらか一つを、お前のその手で決めてくれ』
「――チッ……!!」
碧は手の中にあった高級万年筆を、凄まじい力で真っ二つにへし折った。黒いインクがデスクに飛び散るが、碧の瞳はそれ以上にドス黒い殺意で満たされている。
子供たちの努力の結晶である未来か、命よりも大切な最愛の妻の命か。
南条隼人が仕掛けた、人間の尊厳を徹底的に弄ぶ悪魔の天秤。静まり返る別荘の檻のなかでかすみが絶望に震え、お屋敷で碧が静かに狂気の牙を研ぎ澄ますなか、早瀬家を揺るがす最大の選択の刻が、ついに迫ろうとしていた。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




