第365章:狂気の求婚、檻の再構築
「――南条隼人さん。あなた、南条隼人ね……っ!?」
スイートルームに響き渡ったかすみの告発。
静寂のなか、南将暉――いや、南条隼人は、数秒間ピクリとも動かずに立ち尽くしていた。だが、やがてその端正に整形された顔の口元が、歪に、そして不気味に釣り上がっていく。
「ククク……はははは! さすがは俺の愛した女だ。この顔に変え、名前を変え、南コンチェルの頂点に立っても……お前だけは、俺の『本質』を見抜いてくれるんだねぇ、かすみ」
隼人は持っていたワイングラスを無造作に放り投げた。絨毯の上に赤い液体がじわりと広がるなか、彼は一歩、また一歩とかすみに向かって歩みを進める。その瞳には、紳士の仮面など跡形もなく消え去り、かつてかすみを監禁し、支配していた頃の、あの底なしの暗黒の執着がギラギラと渦巻いていた。
「……っ、来ないで!」
かすみは思わず後ずさりするが、背後は冷たいガラス窓だ。逃げ場はない。
隼人はかすみとの距離を完全にゼロにすると、怯える彼女の美しい顎を、骨が軋むほどの強い力で指先でグイと押し上げた。逃れられない至近距離で、男の狂気に満ちた熱い息がかすみの顔に吹きかかる。
「安心するといい。俺はお前を奈落に突き落とすために実家を潰したんじゃない。……すべてを手に入れて、もう一度お前と結婚するよ」
「な、何を言っているの……!? あなたと結婚なんて、するはずがないわ……っ!」
「するんだよ」
隼人はかすみの震える唇を指先でなぞりながら、うっとりとした、しかし背筋が凍るほど冷酷な声で囁いた。
「早瀬碧の財産も、社会的地位も、お前たちの偽物の家族の絆も、すべて俺が根こそぎ奪い去ってやる。あいつの元には何も残らない。だから、お前が帰る場所なんて最初からないんだ。……いいかい? お前には『早瀬かすみ』なんて名前、1ミリも似合わない。お前は俺の妻、南条かすみとして、一生俺の檻の中で愛されるのがお似合いなんだよ」
「嫌……嫌ぁぁぁっ!!」
かすみは必死に顔を背けようとするが、隼人の力強い腕が、今度は彼女の腰をがっちりとホールドし、その身体を強引に引き寄せた。
すべてを奪い、すべてを焼き尽くし、その焦土のなかでもう一度かすみを我が物にする。
正体を暴かれたことで、男の復讐劇はもっとも悍ましい「略奪と監禁の求婚」へと変貌を遂げ、密室のなかでかすみは、かつてない絶望の牙に囚われようとしていた。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




