第364章:剥がされた仮面、執着の正体
碧との通話を終えた直後、かすみのスマートフォンに再び見知らぬ番号から着信が入った。画面を睨みつけるかすみの耳に飛び込んできたのは、あの南将暉の低く、すべてを見透かしたような笑い声だった。
『かすみ。今すぐ一人で、我がホテルの最上階へ来なさい。来なければ、お前の両親が避難しているあの「おじさまの家」がどうなるか……分かっているね?』
「――っ!」
逃げ場を完全に塞がれたかすみは、お屋敷で心配そうに待つ凛と蓮に「ママ、ちょっと用事が出来ちゃった。すぐに戻るからね」と言い残し、碧にすら告げずに一人、夜の南コンチェル系列ホテルへと向かった。
エレベーターが静かに最上階へ到達し、再びあの豪華なスイートルームの扉が開く。
部屋の奥、ガラス窓の前に立つ南将暉は、かすみの姿を見るなり、実にお愛想のいい極上の笑みを浮かべて両手を広げた。
「よく来てくれたね、かすみ。最愛の子供たちの未来と、実家の破滅を前にして、ようやく俺の元へ這いずり回る気になったかい?」
かすみは部屋の中央で足を止め、拳を強く握りしめた。その全身は恐怖で小刻みに震えていたが、その瞳だけは、目の前の男を真っ直ぐに射抜いていた。
「……もしかしてあなた、私のことを何か知っているの? どうして……どうして私や、私の大切な家族をこんなに苦しめるの? あなたの本当の目的は何なの……っ!?」
かすみの悲痛な叫び。しかし、将暉はただ楽しそうにワイングラスを傾け、「目的? 決まっているじゃないか。お前を俺の檻に引き戻し、早瀬碧の絶望する顔を見るためさ」と、冷酷に言い放つ。
その立ち居振る舞い。かすみを「納屋かすみ」と過去の名前で呼び、異常なまでの執着を燃やすその独占欲。そして、整形された美しい顔の奥に見え隠れする、かつて自分を狭い部屋に監禁し、恐怖で支配していたあの男の「影」――。
バラバラだったパズルのピースが、かすみの脳内で凄まじいスピードで一つに繋がっていく。
息が詰まるほどの緊迫感のなか、かすみはふと、震える声を精一杯に張り上げて言った。
「……いいえ、違うわ。あなたのその執念、その歪んだ目の輝き……。あなたは、南将暉なんかじゃないでしょ?」
将暉のグラスを回す手が、ピクリと止まった。
かすみは一歩前に踏み出し、その偽りの名前の奥に隠された、本当の「悪魔の名前」を突きつけた。
「――南条隼人さん。あなた、南条隼人ね……っ!?」
「――ッ!!!」
その名前がスイートルームの静寂に響き渡った瞬間、南将暉の完璧な紳士の仮面が、激しい驚愕によってパリィィィンと音を立てて砕け散った。
ついに暴かれた最悪の正体。過去の因縁が現在へと完全に交錯し、二人の狂気と宿命の対決は、誰も予想し得なかった真実の泥沼へと突入していくのだった。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




