第362章:忍び寄る崩壊、母の絶望
「ねぇ、蓮はどうなるの……? 中学は、公立に行くしかないよね……?」
蓮が不安げに声を震わせ、リビングのソファで膝を抱え込んでいた。合格を取り消されたショックは、まだ幼い子供にとってあまりに大きく、その心は行き場を失っていた。
かすみは、言葉を失ったまま、立ち尽くしている。今の彼女には、子供たちにどんな言葉をかけてやればいいのかさえ、分からなくなっていた。
その時だった。かすみのスマートフォンが、耳をつんざくような甲高い音で鳴り響いた。
画面に映し出されたのは、実家からの緊急連絡。
「もしもし……っ」
「かすみか!? 今すぐ聞け! 納屋財閥と森野財閥が……大変なんだよ……!」
電話の向こうから聞こえるのは、かすみの父の声だった。先ほどまで冷静だったはずの父の口調が、今は明らかな恐怖と絶望に震えている。
かすみは、血の気が引いていくのを感じながら、父の言葉を必死に聞き取ろうとした。
「……もうダメだ。納屋財閥は、南コンチェルによる一方的な株の買い占めで、もう終わりだ。森野財閥も同じだ……。経営権も、資産も、すべて奪い去られてしまった……」
「そんな……嘘……っ!!」
「かすみ、お母さんとお父さんは、急いで『おじさま』のところに身を寄せているからね。これ以上ここにいたら、連中になにをされるか分からないんだ……」
かすみの手からスマートフォンが滑り落ち、カチャンと床で乾いた音を立てた。
財閥の終焉。それはかすみにとって、自分が生まれ育った故郷が、すべて闇に飲まれたことを意味していた。
「ママ……? ママ、どうしたの……?」
凛と蓮が、顔面蒼白で立ち尽くす母に駆け寄る。
かすみは、かすかに震える唇で、子供たちに最悪の事実を告げなければならなかった。納屋も森野も、もう存在しないのだと。自分たちの後ろ盾であったはずの実家が、南将暉という悪魔によって、あとかたもなく消し去られたのだと。
リビングの空気が、凍りつくように冷たくなっていく。
かすみの瞳から、止めどなく涙が溢れ出す。実家が破滅したという事実以上に、彼女の心を抉ったのは、南将暉が仕掛けたこの残酷なまでの「追い詰め方」だった。
碧が帰宅するまで、かすみはこの重すぎる絶望を、一人で背負うしかなかったのである。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




