第360章:届いた不条理、二大財閥の激震
翌朝。早瀬財閥の総本山であるお屋敷、そして時を同じくして、固い絆で結ばれた貝森財閥の邸宅に、一通の重々しい封書が届けられた。
差出人は、二人の息子たちが春から誇り高く通うはずだった名門――青藍高校付属中学校。
いつもなら吉報を運ぶはずのその紋章入りの封筒を、碧は書斎で冷徹に開封し、かすみはその横で祈るように胸元を抑えていた。しかし、中から現れたのは、あまりにも無慈悲で不条理な「通告」だった。
『――来年度入学者選考における重大な不備に関するお詫びと、合格取消の通知――』
書かれていたのは、事務的な冷たい定型文。試験の採点および選考プロセスに重大なミスが発覚したため、誠に遺憾ながら早瀬蓮の合格を一律で取り消すという、信じられない内容だった。
「そんな……嘘でしょ!? 蓮が、あんなに毎日血の滲むようなお勉強をして、やっと掴み取った合格なのに……っ! 不備だなんて、そんなのあり得ないわ!」
かすみが通知書を握りしめ、ボロボロと大粒の涙を流して崩れ落ちる。
その時、碧のデスクの上のプライベートスマートフォンが、激しいバイブレーションを響かせた。画面に表示されたのは、貝森ファミリーからの緊急直通連絡。
「――碧か。今、青藍から手紙が届いた。湊の合格が『選考不備』として取り消された」
受話器の向こうから聞こえる貝森のトップの声もまた、静かながらも地獄の底から響くような怒りに満ちていた。やはり、貝森家にも全く同じタイミングで同じ不条理が叩きつけられていたのだ。
「ああ、こちらも今、蓮の通知書を読んだところだ」
碧の声は、完全に温度を失っていた。窓の外を睨みつける魔王の瞳は、周囲の空気を物理的に凍らせるほどの絶対的な殺意を宿している。
これが、昨夜スイートルームで南将暉が口にしていた「青藍の情報」の正体。次期理事長の権力を濫用した、あまりにも陰湿で容赦のない報復措置。
リビングでは、姉の凛に付き添われた蓮が、手紙の内容を知って唇を噛み締め、静かに涙をこらえていた。
「パパ……僕、何か悪いことしたのかな……? 湊くんと一緒に、あの中学校に行くの、すごく楽しみにしてたのに……」
我が子の涙。そして親友ファミリーの未来の破壊。
南将暉という毒蛇は、早瀬碧という男が最も触れてはならない「逆鱗」を、これ以上ないほど深く踏み抜いたのだ。
「……貝森、聞こえるか」
碧は受話器に向かって、冷酷極まりない笑みを浮かべながら低く囁いた。
「南コンチェルが学校の経営権を盾に仕掛けてきた。……徹底的にやろう。あいつが手に入れたばかりの青藍の椅子ごと、南の組織すべてをこの世から消し去る」
「当然だ。我が子を傷つけた代償がどれほど重いか、身をもって教えてやる」
早瀬財閥と貝森財閥。この国の経済を牛耳る二大巨頭が、最愛の子供たちの未来を守るため、ついに「南将暉完全抹殺」に向けて裏の同盟を結んだ。悪魔の不条理な手紙は、皮肉にも、最強の魔王たちを完全に覚醒させる開戦の合図となったのだった。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




