第355章:届いた毒の招待状、崩れる日常
翌朝。早瀬家を包んでいた穏やかな空気は、一台の配送車が邸宅の重厚な門をくぐり抜けた瞬間に、完全に塗り替えられた。
「早瀬様、お届け物です。南コンチェル系列のホテルより……」
執事が静かに差し出したのは、高級ブランドのロゴが刻印された二つの箱だった。一つは小さく可憐な、凛への贈り物。もう一つは、より重厚で洗練された、碧への招待状。
碧とかすみは顔を見合わせ、重い沈黙の中でその包みを解いた。
「……っ!」
かすみが小さく悲鳴を上げる。中に入っていたのは、今朝の太陽光を反射して眩いばかりに輝く、特大のダイヤモンドが施されたネックレスだった。箱に添えられたカードには、流麗な筆跡でこう綴られている。
『早瀬凛様へ。今度の招待会、ぜひこのプレゼントを身につけて来て下さい。君の可憐さに、この宝石の輝きが負けてしまわないか心配だよ』
その下には、碧宛の招待状が隠されていた。
『早瀬碧様。我が南コンチェル系列の最高級ホテルへ、家族一同をご招待します。極上の時間を用意してお待ちしております』
「……な、なんなのよこれ……っ!!」
かすみは震える手でそのカードを握りつぶしそうになる。これは単なる招待ではない。娘を自分の支配下に置き、碧を嘲笑うための、明白な「宣戦布告」だった。
「パパ、ママ……! これ、昨日の南社長さんから……? すごい、こんな綺麗なダイヤ、私、着けていっていいの!?」
何も知らない凛が、箱から取り出したダイヤモンドを自分の首元に当て、鏡を見て無邪気にはしゃぎ始める。その純粋な笑顔が、かすみには刃物のように突き刺さった。
「凛、だめっ……! それは、つけては……っ!」
かすみが慌てて凛を制止しようとした、その時。
碧は無言のまま、テーブルの上に置かれた招待状を冷酷な眼差しで睨みつけていた。タキシードを纏う時のような完璧な冷静さの奥底で、その瞳は怒りのあまり、地獄の業火のように静かに燃え盛っている。
(南将暉……。俺の娘に、俺の妻の過去に、あろうことか俺の家庭にまで泥足で踏み込んでくるか……)
碧の指先が、テーブルクロスを強く締め上げる。早瀬財閥の総帥としてのプライド、そして父親としての愛。そのすべてを懸けて、この毒入りの招待状を突き返さなければならない。しかし、同時に碧は悟っていた。この招待状を拒絶すれば、この狂犬は次に何を仕掛けてくるか分からないということを。
早瀬家最大の危機。美しいダイヤモンドの輝きが、何よりもおぞましい呪いのように、リビングの空気を重く支配していた。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




