第343章:無邪気な暴走、お屋敷に落ちた爆弾
お屋敷に帰宅し、それぞれの自室に戻った後も、凛の胸のドキドキは一向に収まる気配がなかった。
ベッドの上にバタンと倒れ込み、お気に入りの大きなクッションをぎゅっと抱きしめながら、凛は天井を見上げて深く長いため息をつく。
「はぁ……かっこよかったなぁ……」
脳裏に焼き付いて離れないのは、あの南コンチェルの南将暉社長の姿だ。仕立ての良い高級スーツ、洗練された大人の佇まい、そして自分たちを見つめていたあの吸い込まれそうな切れ長の瞳。
「今思えば、せっかく高級スパもあるから後で利用するといいよって言ってくれたのに……お部屋も特別に用意してあるって言ってくれたのに、なんで断っちゃったんだろう。私のバカ……!」
凛はクッションに顔を埋めて足をバタバタとさせながら、自分の素っ気ない態度を激しく後悔していた。高学年になり、ちょっぴり大人の世界や素敵な男性への憧れが芽生え始めていた凛にとって、南将暉という男の演出した「完璧なVIP待遇」は、あまりにも刺激的で魅力的に映ってしまったのだ。
あの素敵なホテルに、もう一度行ってみたい。あの格好いい社長さんに、もう一度会ってみたい――。
その純粋で危険な欲求は、翌朝のリビングで、とんでもない爆弾発言となって炸裂することになった。
朝食のテーブルで、碧が淹れたてのコーヒーを口にし、かすみがサラダを取り分けていた、いつもと変わらない穏やかな朝のことである。
「ねぇ、ママ、パパ!」
凛がスープスプーンをピタッと止め、満面の笑みで両親を見つめた。
「今度、あの南社長さんのホテルにお泊まりしたいな! ほら、昨日スパとかお部屋も用意してあげるって言ってくれたじゃない? だから、今度は家族みんなであそこに泊まりに行こうよ!」
「――ッ!!?」
その瞬間、リビングの時が完全に静止した。
碧はコーヒーカップを持ったまま凍りつき、かすみは持っていたトングをトレイの上にカチャンと落として、あまりの衝撃に大きく目を見開いた。
「凛……今、なんて言ったの……?」
かすみの声が引きつる。
「だからね、あのホテルにお泊まりしたいの! 眺めも最高だったし、あの社長さんにもまた会いたいし!」
何も知らない凛の無邪気な笑顔と、その言葉の裏にある南将暉への明らかな好意。我が子が自ら毒蛇の巣窟へ飛び込もうとするかのような突然の発言に、早瀬夫妻は激しい驚愕と、背筋を凍らせるような戦慄に包まれるのだった。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




