第339章:無垢なる提案、忍び寄る毒蛇
「わあ、本当に素敵なホテル……!」
大理石の床に館内の美しい照明が反射するロビーで、凛と蓮はパンフレットや外の景色を見比べながら、楽しそうに声を弾ませていた。高学年になり、周囲の素晴らしい景色への感性も育ってきた二人にとって、この新しくリニューアルされた高層ホテルのロケーションは特別なものに映ったのだろう。
「ねぇ、パパ、ママ! 今度は湊くんと百合ちゃんも一緒に……あっ、貝森拓人おじさまとあやめおば様夫妻も一緒に、みんなでここに毎たいな!」
凛がかすみの手をきゅっと握り締めながら提案すると、蓮も深く頷いて碧を見上げた。
「うん、僕もみんなで来たいな。だって、ここから見える景色、すっごく眺めがいいから。こんなに素敵な場所があるんだよって、早くみんなに教えてあげたいの」
親友家族を思いやる子供たちの温かい会話。かすみは「そうね、今度はみんなで来ましょうね」と優しく微笑み、碧もまた、我が子たちの優しい心根に目を細めていた。
――だが、その温かい空気は、突如として割り込んできた低く洗練された足音と声によって、一瞬にして凍りつくことになる。
「それは素晴らしいご提案ですね。ぜひ、次回の御会合には我が南コンチェルのVIPルームをご提供させていただきたい」
「――っ」
碧の視線が瞬時に鋭さを増し、子供たちの前に立ちはだかるように一歩前へ出た。
声の主は、完璧な紳士の笑みを浮かべてさっそく近づいてきた男――南将暉だった。彼は碧の放つ凄まじい威圧感を優雅にいなしながら、まずは初めて顔を合わせる形になる凛と蓮に向けて、大人の色気を湛えた美しい笑みを向けた。
「はじめまして、可愛いお嬢さん、そしてそちらの若き紳士。私はこのホテルのオーナーを務めております、南将暉です」
将暉は子供たちへ丁寧に一礼した後、ゆっくりと顔を上げ、碧とかすみの前に立った。その切れ長の瞳の奥には、かすみへの狂おしい執着と、「俺の子供かもしれない」という双子への歪んだ観察の目が妖しく光っている。
「早瀬会長、そして夫人。この前の早瀬ホールディングス創立記念パーティーでは、私のような新参者を温かくご招待いただき、本当にありがとうございました。改めて御礼申し上げます」
将暉は完璧な社交辞令を述べた後、ふっと周囲の豪華な内装を見渡し、値踏みするような視線を再び碧へと戻した。
「それにしても、不思議ですね……。今日はお二人とも、どうして我が南コンチェルのホテルへお越しいただいたのですか? 事前にご連絡をいただければ、オーナーとして最高の御もてなしをご用意いたしましたのに」
その問いかけは、どこまでも丁寧でありながら、「俺の縄張りに何の用だ」と挑発するような冷たい響きを孕んでいた。何も知らない凛と蓮が不思議そうに将暉を見つめるなか、早瀬碧の瞳には、一切の容赦のない魔王の冷徹な光が宿るのだった
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




