第336章:帝王の仮面、要塞の中の毒蛇
創立記念パーティーの会場を屈辱のなかで後にした南将暉は、夜の都心を疾走する最高級送迎車のなかで、ひたすらに怒りを反芻させていた。
車が滑り込んだのは、東京の一等地にそびえ立つ、ガラス張りの超高層ホテル。これまでは海外を拠点に動いていた彼だったが、今回の日本逆上陸にあたり、すでに「長すぎた海外生活」には完全に終止符を打っていた。
今、彼が滞在しているのは、自身が率いる南コンチェル系列の最高級ホテルの最上階スイートルーム。
全面ガラス張りの窓からは、きらびやかな東京の夜景が一望できる。一般人では一生足を踏み入れることすら叶わないラグジュアリーの極みのような空間だが、今の将暉にとって、ここは単なる豪華な寝床ではない。早瀬碧からすべてを奪い取るための、冷徹な『前線基地(要塞)』だった。
「ふん……、早瀬ホールディングス。今夜だけは大人しく引き下がってやったが、次はないぞ」
将暉はジャケットを脱ぎ捨てると、高級なクリスタルグラスに注いだ琥珀色のウイスキーを口に含んだ。
脳裏にしつこくこびりついて離れないのは、先ほどバルコニーで目撃した、かすみのあの眩しい笑顔だ。
「早瀬かすみ……だと? 笑わせるな」
将暉はグラスを強く握りしめ、切れ長の瞳を憎悪と執着でドス黒く濁らせた。
かすみが早瀬碧の妻として生き、あの男の腕の中で幸せそうに微笑んでいるなど、南条隼人としての過去を持つ彼には、天地がひっくり返っても「ありえない」現実だった。あのかすみは、かつて自分の邸宅で、自分の作ったスープを飲み、自分の支配下で生きていた女なのだ。他の男のものになっていいはずがない。
「何が旦那だ。何が海外生活の綺麗な話だ……!」
かすみの無邪気な質問の数々が、彼のプライドを内側から切り裂いていく。だが、その激痛はすでに、早瀬碧への狂気的な殺意へと変換されていた。
「今世で何が何でも手に入れると決めたんだ。顔を変え、名前を変え、世界を動かす富を手に入れた今の俺に、奪えないものなど何一つない。早瀬碧……お前がどれだけ強固に囲っていようと、必ずその腕からかすみを奪い取ってやる」
将暉は窓ガラスに映る別人の顔を見つめながら、氷の触れ合う音と共に不敵な笑みを浮かべた。
海外生活を終え、日本の中心に毒蛇のように潜り込んだ男の執念の牙が、平和を謳歌する早瀬家に向けて、じわじわと向けられようとしていた。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




