第333章:夜風の対峙、魔王の帰還
カーテンが揺れる大きなガラス扉をくぐり、二人はライトアップされた広大なバルコニーへと出た。
東京のきらびやかな夜景と、心地よい冷たい夜風がかすみの頬を撫でる。会場の熱気から解放され、かすみは小さく息を吐いたが、隣に立つ「南将暉」という男の、値踏みするような熱い視線にはまだ気づいていなかった。
将暉は、二人きりになれたこの空間に、内心で狂喜乱舞していた。変装しているとはいえ、今こうして愛しのかすみが、自分のすぐ隣で夜風に吹かれているのだ。
そんな将暉のドス黒い高揚感を知る由もないかすみは、上品に微笑みながら、大物CEOへの礼儀として言葉をかけた。
「南社長、少しお聞きしてもよろしいですか? ……あの、南コンチェルほどの世界的な大企業ともなると、やはり海外でもたくさんの華やかなパーティーに出席されているのでしょうね?」
「ええ、まぁ、仕事柄そういう機会は多いですね」
将暉は洗練された仕草で頷く。かすみは彼の完璧な立ち振る舞いを見上げ、素直な感嘆の声を漏らした。
「やっぱり……。南社長はとても洗練されていらっしゃいますもの。……あの、これほど素敵なお方ですと、もうお隣には、綺麗な奥様がいらっしゃったりするのではないですか? 私のような普通の人間なんて、南社長の足元にも及びませんわ」
(奥様、だと……?)
その言葉が、将暉の脳裏で甘美に、そして歪んだ形でリフレインした。
(俺の妻は、世界でただ一人、お前だけだ。今目の前にいるお前を、俺の腕の中に連れ戻すために、俺は地獄から這い上がってきたんだ……!)
興奮で将暉の喉が小さく鳴り、その端正な顔が、紳士の仮面を脱ぎ捨てる一歩手前の、悍ましい狂気の笑みに歪みかける。
「――かすみ」
その時、バルコニーの扉が毅然とした音を立てて開いた。
低く、圧倒的な威圧感を伴った、聞き慣れた愛しい声。
「あ……」
かすみはハッと表情を輝かせ、室内の光を背に受けて歩み寄ってくる漆黒のタキシード姿の男を見つめた。
「あっ、私の旦那です」
かすみは嬉しそうに、そして誇らしげに南将暉にそう告げると、自然な足取りで将暉から離れ、迎えにきた早瀬碧の元へと駆け寄った。
碧はかすみの腰を優しく、しかし外の男から完全に遮断するように強く抱き寄せると、冷酷極まりない、すべてを見透かすような氷の視線を、暗闇に立つ「南将暉」へと突き刺すのだった。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




