第331章:不穏な祝祭、闇からの凝視
都内超一流ホテルの大グランドパレス。
今夜、そこは政財界の超大物たちが一堂に会する、早瀬ホールディングスの創立記念パーティーの会場となっていた。天井で燦然と輝く巨大なクリスタルシャンデリアが、ドレスアップした紳士淑女たちを眩しく照らし出している。
会場の中央には、美しいイブニングドレスに身を包み、すっかり穏やかな笑みを取り戻した早瀬かすみの姿があった。その隣には、漆黒のタキシードを完璧に着こなし、圧倒的なカリスマ性で周囲のゲストと談笑する夫の早瀬碧。さらにその傍らには、相変わらず仲睦まじい貝森拓人とあやめの夫妻、そしてすっかり背が伸びて気品溢れる制服風の礼服を纏った凛、蓮、湊、百合の子供たちの姿もあった。
「お父様、お母様、本当に素晴らしいパーティーですね!」
高学年になり、少し大人びた口調で微笑む凛の言葉に、かすみは「ありがとう、凛。みんながこうして一緒にいてくれるお陰よ」と、心からの幸せを瞳に宿して微笑み返していた。
まさに、誰もが羨む完璧な幸福の絵画のような光景。
――だが、その光の聖域を、冷酷に、そして悍ましい執着を持って見つめる一対の瞳が、会場の最暗部に存在していた。
「ふん……相変わらず集まっているのは、あの忌々しいおなじみの面々ばかりか」
会場の隅、壁際にひっそりと置かれたハイテーブル。そこに優雅に身を預け、シャンパングラスを傾けている一人の男――南コンチェルの新CEO、南将暉は、端正に整形された冷たい顔に、酷薄な笑みを浮かべていた。
完璧な骨格形成と顔立ちの変更、そして海外の洗練された仕草を身につけた今の彼を、かつて破滅に追い込まれた「南条隼人」だと気づく者は、この会場に一人もいない。早瀬の厳しいセキュリティのSPたちですら、今や世界有数の投資大物となった『南将暉』を、最高の国賓級ゲストとして丁重に迎え入れたほどだ。
将暉はグラスの泡越しに、遠くで碧と笑い合っているかすみの美しい横顔をジッと見据えた。
「さてと……。まずはこの端の方にいて、お前たちの無様なほど平和な様子をじっくりと観察させてもらおうじゃないか」
かつて力と恐怖で支配しようとして失敗した過去の教訓を、今の将暉は冷徹な狂気へと昇華させていた。今度は焦らない。早瀬碧の築き上げたすべてをビジネスの表舞台から合法的に握りつぶし、その絶望の底で、彼女を再び手に入れるのだ。
将暉はかすみに向けて、声に出さず、ただ心の奥底で、蛇のようにねっとりとした言葉を囁きかけた。
(早瀬かすみ……やっと会いに来たよ。今は早瀬を名乗っていても、お前は俺の……俺の、未来の妻なんだからな)
冷たいシャンパンを一口飲み干した南将暉の瞳に、パーティー会場の華やかな光が、血のように真っ赤に反射して妖しくギラリと輝いた。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




