第330章:漆黒の逆上陸、南コンチェルの罠
子供たちが無事に中学受験を終え、サファリア女学院と青藍高校付属中学への進学を決めてから、さらにいくつかの季節が流れた。早瀬家と貝森家が、次世代の成長と共にこれ以上ない幸福と平和を享受していた、まさにその裏側でのことである。
日本のビジネス街の夜景を見下ろす、超高級ホテルの最上階スイートルーム。
その洗練された空間の鏡の前に、一人の男が静かに立っていた。
かつて早瀬碧とおじさまによってすべてを剥ぎ取られ、路頭に迷い、狂気の言葉を残して姿を消した南条隼人――その男の面影は、今の鏡の中には、微塵も残されていなかった。
男は海外の極秘医療機関で、骨格から顔のパーツに至るまで、完全に別人に生まれ変わるための凄惨な整形手術を終えていた。
鏡に映るのは、完璧に整えられた切れ長の瞳と、冷徹な大人の色気を漂わせる、誰もが見惚れるほど端正な「見知らぬ男」の顔だ。
「……フッ、完璧だ。もう、あの無様な南条隼人は、この世のどこにも存在しない」
男は低く、洗練された声で呟き、仕立ての良い高級スーツの襟を正した。
彼は数年間、海外の暗黒街と裏の金融界を這いつくばり、己の才覚と冷酷さだけで、今や世界的な巨大資本である『南コンチェル』のCEOという絶対的な地位をも手に入れていた。
現在の彼の名は、南将暉。
すべては、あの日自分を奈落に落とした男たちへの復讐のため。そして――。
「待たせたね、早瀬かすみ。……いや、今は碧の妻となって、その姓を名乗っているんだったか」
将暉の瞳の奥に、かつてかすみを拉致監禁し、スープを口に運んだあの南条隼人の、ドス黒く歪んだ執着の炎が妖しく揺らめいた。
手元の高級タブレット端末には、近々開催される政財界の巨大イベントの招待状が映し出されている。
【早瀬ホールディングス 創立記念パーティー】
早瀬碧が率いる巨大グループの栄華を祝うその華やかな舞台こそ、新しく生まれ変わった自分が、堂々と表舞台から侵入するのに相応しい戦場だった。
「僕の腕の中に、必ずかすみを取り戻してみせる。早瀬碧、お前の築き上げた栄華の絶頂で、すべてを奪い取ってやるからな……楽しみに待っているといい」
南将暉は不敵な笑みを浮かべ、夜の街へと視線を向けた。悪夢の男が完全なる『魔王』へと進化を遂げ、かすみのすぐ近くまで、再びその鋭い爪を伸ばそうとしていた。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




