第324章:共有された地獄、魔王の告白
「好きな人を、他の男に奪われる時の……あの身が引き裂かれるような気持ちが、お前にだってわからないはずがないだろぉぉぉーーーっっ!!!」
南条隼人の狂ったような、血を吐くような絶叫が、狭い室内に激しく木霊する。
その言葉を聞いた瞬間。
隼人の胸ぐらを掴んでいた碧の動きが、わずかに止まった。その美しい瞳の奥に、激しい動揺の波紋が広がり、冷徹だった仮面の裏から、かつて誰にも見せたことのない『一人の男』としての生々しい痛みが溢れ出す。
(……ああ、わかるさ。わかるに決まっている――)
碧の脳裏に、固く封印していたはずの、眩しくて、そして狂おしいほどに苦しかった学生時代の記憶が、濁流のように押し寄せてきた。
サファリア女学院と青藍高校の合同交流会。
華やかな若者たちが集まるその場所で、碧は初めて彼女に出会った。純白の百合のように可憐に笑う、納屋かすみという少女に。
その後の、皆で行ったファミレスでの賑やかな時間。お互いの距離を縮めたパジャマパーティー。どんなに楽しい空間であっても、碧の視線は常に、ただ一人だけを追いかけていた。
だが――かすみの隣には、いつも決まって一人の男がいた。
碧の親友であり、最大のライバルでもあった、貝森拓人だ。
いつも拓人の隣で、世界一幸せそうに、無邪気に笑っていたかすみ。碧もまた、その輝くような笑顔に、狂おしいほど恋をしていたのだ。
忘れもしない、ある日の放課後。夕暮れに染まる教室の片隅で、拓人とかすみがはにかみながら見つめ合い、かすみが拓人のほっぺにチュッと、愛おしそうにキスをしたあの瞬間。
物陰からそれを見てしまった碧の胸は、文字通りバラバラに張り裂けるような激痛に襲われた。嫉妬と、絶望と、自分の手の届かない場所にいる愛しい人への、狂いそうなほどの未練。
「……早瀬碧も、実はそうだったんだよ」
碧は低く、掠れた声で、床に這いつくばる隼人に向けて呟いた。
「お前の言う通りだ、南条隼人。サファリアの交流会でも、ファミレスでも、パジャマパーティーでも……かすみの隣にはいつも拓人がいた。あいつらが、ほっぺにチュッて笑い合っているのを見た時、俺の胸も……張り裂ける思いだった。お前が今叫んだその絶望を、俺は誰よりも、痛いほどよく知っている」
「え……?」
隼人は涙に濡れた顔を上げ、驚愕に目を見開いた。
「だがな、南条隼人。お前と俺の決定的な違いは、たった一つだ」
碧は、胸に突き刺さる過去の痛みを力に変えるように、再びその瞳に魔王としての冷酷な光を宿し、隼人を激しく見下ろした。
「俺はどれほど胸が引き裂かれようとも、かすみを恐怖で支配しようとはしなかった。力ずくでお前のおもちゃにされたかすみの痛みが、お前にわかるか……!? 同じ気持ちだからこそ、お前のしたことが、俺は絶対に許せないんだよ……!!」
過去の失恋の傷を共有しながらも、決して交わることのない二人の男。碧の魂の底からの叫びが、南条隼人の歪んだ愛を完全に打ち砕くように、冷たく響き渡るのだった。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




