第18章:強欲の晩餐、響く嘲笑と私の決意
サファリア女学院の学園祭が終わり、夜景を背に隼人から無理やりダイヤの指輪を嵌められ、そのまま車で連行された先は『露村財閥』の広大な邸宅だった。
私は今、冷え切った空気が漂う露村家の重厚な食堂に座っている。
テーブルの上には、見るからに高級そうなフランス料理のフルコースが並んでいた。
「さぁ、かすみ。君の好きな物を用意したよ。遠慮せずに食べるといい」
隼人はキザな笑みを浮かべて勧めてくるけれど、私の胸は不安と緊張ではち切れそうで、お料理はちっとも喉を通りそうにない。私は手元にある、お守りのように大切に抱きしめた「自由帳」の角を、震える指で必死に握りしめていた。
(……はぁ。やっぱり、私はここに来たら行けない場所だったのね……)
そんな私の様子を見た隼人は、フッと息を吐いて椅子から立ち上がった。
「少しバルコニーに出て、風に当たろうか」
促されるまま、私は自由帳を抱きしめたままバルコニーへと向かう。
しかし、食堂から出ようとしたその時――背後から、食堂に残った露村家の強欲な親族たちの、冷ややかなひそひそ話がはっきりと耳に飛び込んできた。
「――おやおや、あれが隼人が選んだ納屋財閥の娘ですか? 緊張してご飯も喉を通らないなんて」
「あら本当。そんな子供っぽい『自由帳』を大事そうに抱えて……なんて世間知らずなお嬢様なのかしら」
「これでは我が露村財閥には完全に不釣り合いなのよ。あんなゴミ虫のような一般民に囲まれていた娘が、当主夫人など務まるわけがないのにねぇ」
クスクスという冷酷な嘲笑と、突き刺さるような冷たい視線。
その言葉が、私の胸の奥に深く突き刺さる。……けれど、その痛みと同時に、私の中で何かが弾けた。
(世間知らず……不釣り合い……。私は、この人たちの着せ替え人形になるために生まれてきたんじゃない……!)
青藍高校のみんなの笑顔と、私を『至宝』として守り続けてくれた過保護なあの人の顔が頭に浮かぶ。私は歩みを止め、ゆっくりと振り返り、冷たい目を向けてくる親族たちと隼人を真っ直ぐに見据えた。
そして、胸元で自由帳をさらに強く抱きしめ、凛とした声で言い放ったのだ。
「――私、あなたとの婚約も結婚も、絶対にしません!」
「な……何だと……!?」
驚愕に顔を歪める隼人と、凍りつく親族たち。
私が自分の足で立ち上がり、運命を変える反撃の狼煙を上げた、まさにその瞬間だった――。
第19章に続く




