第305章:サファリアの亡霊、歪んだ嫉妬の果てに
「……源玲奈。それがお前の本名だな」
早瀬碧の冷徹な声が、南条財閥の応接室に鋭く響き渡った。
資産を一瞬にして凍結され、ガタガタと震える新しい妻に向けて、碧はおじさまの調査機関が暴き出したばかりの、さらなる『裏のカルテ』を突きつけた。
「源ファイナンスの令嬢。表向きはクリーンな金融会社を装っているが、裏では南条財閥の汚れた資金を洗浄してきた、最大の共犯者だ。……そして、かすみが神宮寺クリニックで心の拠り所にしていた、あの『子猫』を連れてきて罠を仕掛けたのも……お前だな、源玲奈」
「っ……、あははははっ!!」
正体を暴かれたその瞬間、源玲奈はそれまでの淑女の仮面をガラガラと脱ぎ捨て、狂ったような高笑いを応接室に響かせた。その瞳には、かすみへのドス黒い憎悪がギラギラと渦巻いていた。
「そうよ、あの猫を仕込んだのは私よ! あんな出来損ないのハチワレ、どこかの路地裏で拾ってきたの! あのかすみが、自分のせいで猫がどうにかなるんじゃないかって、毎日恐怖で生きた心地もしないようにね……!!」
玲奈は立ち上がり、碧を、そしてかつて自分を見下していた世界を睨みつけるように叫んだ。
「早瀬碧、あなた何も知らないのね? 私はね、納屋かすみと同じ『サファリア女学院』の、隣のクラスだったのよ……!」
明かされる、あまりにも歪んだ過去の因縁。
数年前、南条財閥が主催した華やかなパーティーの夜。そこには、まだ学生だった納屋かすみと、源玲奈の二人の姿があった。
二人は密かに、将来の財閥のトップである南条隼人と誰がお付き合いをするか、火花を散らして狙い合っていたのだ。
だが、当時のブランド力は、源ファイナンスなど足元にも及ばないほど「納屋財閥」の名前が有名であり、圧倒的だった。
金と権力にしか目のない南条隼人は、迷うことなく有名大財閥の令嬢である納屋かすみに声をかけ、玲奈に見せつけるようにして、お付き合いもそこそこに、体裁だけを整えて一気に結婚してしまったのだ。
「あの時からずっと……私はあのかすみが、納屋の名字が、憎くて憎くて堪らなかった……! 納屋財閥が没落して、隼人様が早瀬に追い詰められた今こそ、私が隼人様と結ばれて、かすみからすべてを奪い取って、私が勝者になる絶好のチャンスだったのよ……!!」
狂ったように叫ぶ源玲奈の隣で、南条隼人は自分の過去の『金目当ての結婚』の裏事情まで碧の前で全て暴露され、プライドも何もかもを失って無様に顔を覆っていた。
「自分の歪んだ嫉妬のために、かすみを追い詰め、僕たちの子供の命まで奪ったというのか……」
碧の拳から、パチパチと骨の鳴る音がする。
過去から続く女の執念と、南条のゲスな野心が引き起こした、最悪の悲劇。
すべての真相を知った碧の瞳には、二人をこの世のどんな地獄よりも深く、冷たい破滅へと引きずり込むための、真の「魔王の裁き」の光が宿るのだった。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




