第300章:復讐のカルテ、暴かれる悪意
かすみが眠る病室の隣、遮音性の高い特別応接室の机の上に、早瀬ホールディングスの情報部門が総力を挙げて調べ上げた、分厚い調査報告書が叩きつけられた。
早瀬碧は、狂おしいほどの怒りを噛み殺しながら、さっそく南条隼人と、あの邸宅で不敵に微笑んでいた「新しい結婚相手」の身元について目を通し始めた。
「……なるほど、そういうことか」
碧の口から、凍りつくような冷たい声が漏れる。
南条隼人の新しい妻――彼女の正体は、南条グループの密かな資金源であり、裏社会とも繋がりの深い闇金融のトップの令嬢だった。
南条隼人は、おじさまによって神宮寺クリニックの弱みを握られ、早瀬からの包囲網によって社会的に破滅しかけていた。だからこそ、あの男は自分を救い出すための『盾』と『資金』を求め、かすみを拉致監禁していたまさにその時期から、裏でこの婚姻を進めていたのだ。
どこまで行っても自分本位な、吐き気のするような保身の婚姻。
だが、碧の怒りが本当の意味で臨界点を超えたのは、その後に届いた「おじさま」からの極秘の直行レポートを目にした瞬間だった。
そこには、おじさまのSPが捕らえた南条隼人の側近たちの供述、そして神宮寺クリニックの診療データのさらに奥から暴かれた、悍ましい真実が記されていた。
『――南条隼人は、かすみさんが不妊治療の末に授かった命だと知りながら、わざとその精神を崩壊させるためのハラスメントを計算して行っていた。かすみさんが流産に追い込まれることすら、早瀬の血を絶やすための作戦の範疇だった可能性がある』
「っ……、あいつは……、あの男は……っっ!!」
ガタタッ!!! と、碧は凄まじい音を立てて椅子を蹴り飛ばし、立ち上がった。
手元にあった報告書を、怒りのあまり引き裂かんばかりの力で握りしめる。碧の端正な顔は、これまで見たこともないほど激しい憎悪で歪み、瞳には大爆発した怒りの炎が真っ赤に燃え上がっていた。
かすみが今も隣の部屋で、冷たくなったお腹をさすりながら「赤ちゃん返してよ」と泣き続けているというのに。
あの南条隼人は、自分たちの愛の結晶を、最初から壊す目的でかすみを追い詰め、自分はさっさと新しい女と結託して次の資金を手に入れ、のうのうと生き延びようとしている。
「南条隼人……ッ!!! どこまで、どこまで僕たちを踏みにじれば気が済むんだ……っっ!!」
碧の絶叫が、防音の室内を激しく震わせた。
ドンッ!!! と、碧は拳を激しく壁に叩きつける。その拳からは血がにじんでいたが、今の碧にはそんな痛みなど全く感じられなかった。
おじさまからの報告は、碧の心に眠っていた最後の慈悲を完全に消し去った。
ただの社会的な失脚では生ぬるい。あの男と、その悪意に加担した新しい結婚相手のすべてを、今度こそ地獄の底の底まで叩き落とし、二度と這い上がれないように徹底的に破滅させる。
病室から聞こえるかすみの悲痛な幻聴を胸に抱き、碧は完全に「復讐の魔王」へと覚醒するのだった。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




