第297章:血に染まる足跡、執念の果てに
病院の外は、冷たい夜の静寂に包まれていた。
緊急手術の傷跡は生々しく疼き、一歩歩くたびに下腹部を燃えるような激痛が突き刺す。麻酔が切れたばかりの身体は鉛のように重く、視界は何度も激しく歪んだ。
それでも、かすみは立ち止まらなかった。病院の薄いパジャマのまま、溢れ出る冷や汗を拭うこともせず、ただひたすらに、すべての元凶であるあの男の元へと向かってふらふらと歩き続けていた。
普通なら、歩くことさえ不可能なはずの重傷。だが、今の彼女を突き動かしているのは、肉体の限界を遥かに超越した、我が子を奪われた母親の狂おしいまでの怨念だった。
「南条、隼人……っ」
かすみは激しい痛みに耐えるように、自分のお腹を強く抱きしめた。
ついさっきまで、そこには確かに愛しい命のぬくもりがあったのだ。碧との愛の結晶、眩しい未来の希望。それを、あの男の悍ましい執着と、冷酷な悪意がすべて踏みにじり、奪い去った。
「南条隼人が……すべてを、すべてを奪ったのよ……っ」
枯れ果てたはずの目尻から、再び熱い涙が零れ落ちる。
あんなに愛おしかった、子猫と赤ちゃんが並んで眠る夢のぬくもりには、もう二度と戻れない。新生児室のどこを探しても、あの誇り高き『早瀬』の名字を与えられるはずだった我が子のベッドは存在しないのだ。
「私の赤ちゃんを返して……っ。返してよ、南条隼人……っっ!!」
声にならない悲鳴が、かすみの胸の奥から血を吐くようにせり上がる。
ボロボロの身体を引きずり、怒りの炎で瞳を血に染めた聖母は、ついにすべての悪意の根源が潜む、南条隼人の元へと辿り着くのだった。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




