第291章:光なき部屋の祈り
「血圧低下! すぐに酸素マスクを! 緊急オペの準備、急いで!!」
遠のいていく意識の境界線で、かすみは激しい金属の擦れ合う音と、医師たちの緊迫した怒号を聴いていた。
空中庭園での突然の激痛から、事態は一刻を争う最悪の局面へと進んでいたのだ。かすみは衣服を着替えさせられ、ストレッチャーのまま、冷たい光が不気味に輝く緊急手術室へと運び込まれていた。
お腹の奥を容赦なく襲う激痛は、容赦なくかすみの体力を奪っていく。
「かすみ! かすみ、僕の声が聞こえるかい!?」
手術室の入り口の手前まで、碧がかすみの手を両手でぎゅっと握りしめたまま、必死に叫び続けていた。その端正な顔は恐怖で真っ青に染まり、今にも泣き出しそうなほどに歪んでいる。
「碧、さん……。わたし、お腹が……っ」
かすみは朦朧とする視界の中で、必死に医師の白衣の袖を震える手で掴んだ。
「先生……っ、私の赤ちゃん、まだだよね……!? まだ生まれる時期じゃないはずなのに……先生、どうしてこうなるの……? お願い、この子を、この子を助けて……っっ!!」
涙がかすみの目尻から幾筋も溢れ、冷たい手術台を濡らしていく。
なぜ、神宮寺クリニックでの裏切りを乗り越え、ようやく子供たちと猫ちゃんに囲まれて幸せを掴みかけたこの瞬間に、こんな残酷な試練が訪れるのか。南条隼人がもたらした精神的なストレスの爪痕が、これほどまでに深くかすみの身体を蝕んでいたというのか。
「かすみさん、落ち着いてください! 今からお腹の赤ちゃんを守るための緊急手術を行います。お母さんであるあなたが諦めてはいけません、私たちを信じて!」
医師の力強い声と共に、かすみの口元にパタッと酸素マスクが当てられた。
「麻酔を投与します。ゆっくり深く息を吸ってください」
「いや……っ、赤ちゃん……っ、碧、さん……っ!」
碧の手のぬくもりが、ゆっくりと指先から離れていく。
冷たい麻酔の感覚が全身を包み込み、激痛が嘘のように遠のいていく中、かすみは最後の最後まで、お腹の中の愛しい我が子の無事だけを祈りながら、深い闇の底へと意識を沈めていくのだった。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




